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「残高がゼロになった時は、涙が止まらなくて…」“アメフト経験ナシ”の20歳が「NFLに行きたい」で全米トップ級大学のスタメンになった波乱万丈
text by

北川直樹Naoki Kitagawa
photograph byNaoki Kitagawa
posted2025/02/10 11:02
NCAA1部のハワイ大学アメフト部で正キッカーを務める26歳の松澤寛政。前人未踏の道だったこともあり、その経緯には多くの障壁もあった
現在はホームのアロハスタジアムが工事中で仮設スタジアムのため、観客は1万5000人ほどしか入らない。しかしアウェイのゲームに行けば、3万人以上の観客が当たり前に入る世界だ。今までとは段違いのプレッシャーが掛かることになる。
「シチュエーションでやっぱり緊張した場面はありますね。1年を通してメンタルのトレーニングをたくさんしました。自分で調べたり、チームメイトに教えてもらったり。ケアやメンテナンスもしっかりやりました。でもキッカーは結局ハートなんで、コーチとも話してずっとトレーニングしてきました」
結局、2024年のシーズンで松澤は12本のフィールドゴール、32本のトライフォーポイントを成功させた。
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「1年間、やり切れたことが唯一良かったことです。ミスもありましたし、成功と失敗がスコアに直結するポジションなんで、もっと良い成績を出したいです。40ヤード以内のフィールドゴールを100%にすることとか……色々課題はありますね」
「もうすぐそこまで(NFLが)来ている」
現在地について、松澤は率直にどう感じているのだろうか。
「次のシーズンでいい成績を出せれば、もうすぐそこまで(NFLが)来ているなという認識もあります。いろんな意味で紙一重なのがキッカーというポジションなので。結果が残せれば大いに可能性はあると思いますし、僕はそれを信じています」
日本人がNFLに行くこと自体は、大いに可能性があることだと考えている。
「方法論や手段は色々あると思いますが、僕が自分なりのやり方でここまで来られたので、少なくとも同じやり方を根気強くやれば、ここまで到達できる人はたくさん居ると思います。サッカーとかラグビーにはすごい選手がたくさんいますし……」
ある意味で、前人未踏の道を歩み続けてきた4年間ではあった。
20歳の、日本でのアメフト経験すらない選手の「NFLに行きたい」という夢物語は、すでに夢から明確な目標へと姿を変えている。

