Number ExBACK NUMBER
「人生をリセットしたい…」大学受験に2度失敗…落胆した「普通のサッカー少年」の思い付き「全米No.1競技でプロになろう」その後の“まさかの軌跡”
text by

北川直樹Naoki Kitagawa
photograph byNaoki Kitagawa
posted2025/02/10 11:00
現在、NCAA1部のハワイ大学アメリカンフットボール部で正キッカーを務める26歳の松澤寛政。20歳まで縁のなかった競技でプロを目指した破天荒な理由は…?
2018年のある日、みかねた父親が「日本の外で起きていることを、自分の目で見てきなさい」とだけ言い、米国への往復チケットをくれた。
これが、松澤の人生のターニングポイントとなる。
「何も決めずに飛行機に乗り、西海岸を2週間ふらついていました」
ADVERTISEMENT
大義名分があったわけではない。だが、松澤はこの旅を通して大きな学びを得る。
「サンディエゴの空港に降りた時に、すごいワクワクがあったんです。でも、まず空港からの出方がわからなくて。それを英語で聞く能力も、答えを聞いて理解できる能力も無いんです。日本で20年くらい不自由なく生きてきたのに、一回外に出たら自分では何もできない。それが悔しくて、刺激になりました」
西海岸は陽気で、治安がいい場所だと思っていた。しかし、この思い込みもすぐに覆される。
「実際にはホームレスもたくさんいて、日本のメディアで見てきた自分の想像する“アメリカ”との違いを突きつけられました。日本では考えられないことがアメリカにはある、というのがすごいインパクトで残っています」
初めて見たアメフト…「NFL選手になりたい」?
旅の途中、サンフランシスコで本場のフットボールの試合を見に行った。オークランドで行われたNFLの開幕戦。ここで松澤は人生の夢を見つける。
「この迫力、観客の一体感……すぐにコレだなと思いました。向こうのフットボールは、エンタメとしてもビジネスとしても成立しています。日本では考えられない盛り上がりがあって、それを肌で感じました。――そこで、自分もNFL選手になりたいなと」
NFLというアメリカ最大級のスポーツイベントを見て、それに感激する日本人は決して少なくない。だが、普通はそこから「NFL選手になりたい」と思うまでには大きな隔絶がある。しかもこの時、松澤はすでに20歳になっていた。一般的に言えば若者でも、スポーツの世界でゼロから新しい競技を始めるには、明らかに遅すぎる年齢だった。
にもかかわらず、である。幸か不幸か松澤はその断崖を、一足飛びで飛び越えてしまった。
いままでの人生をリセットし、新たな20年で人生を変える。そう心に決めた。

