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ベルガー、バリチェロ、ボッタス、ペレス…記録には残らずとも、最強王者たちのタイトルに貢献した「名脇役」たちの記憶
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尾張正博Masahiro Owari
photograph byGetty Images
posted2025/02/07 17:00
1990年、マクラーレン・ホンダでチームメイトだったセナ(左)とベルガー
ランキング2位のマンセルがタイトルを獲得するには優勝するしかない状況で、予選ではベルガーがポールポジションを獲得。セナも2番手に続いて、マクラーレン勢がフロントロウを独占した。レースではベルガーもセナも好スタートを切り、1−2を堅持。優位に立ったマクラーレンはマンセル優勝を完全に阻止すべくベルガーをそのまま先行させ、2番手のセナが3番手のマンセルを抑える作戦を採った。その結果、早くセナを抜いてベルガーに追いつきたいマンセルは強引なオーバーテイクを仕掛けてコースアウト。リタイアの瞬間、セナの3度目の王座獲得が決定した。
マンセルを封じ込めたセナの巧みなドライビングもさることながら、ベルガーがポールポジションを獲得したことが勝因として大きかった。この予選でベルガーが記録した1分34秒700は鈴鹿のコースレコードを更新するスーパーラップとなり、その後10年間、だれにも破られることはなかった。
フェラーリ黄金時代を築いた名脇役
史上最多、7度の王座を獲得したシューマッハにも、エディ・アーバインとルーベンス・バリチェロという実力を持つチームメートがいた。特にバリチェロは実力だけでなく、強い忠誠心を併せ持つ最高のセカンドドライバーだった。それを象徴するレースが01年と02年のオーストリアGPだった。01年は2番手走行中のバリチェロに対し、最終ラップでシューマッハを先行させるチームオーダーが発令された。02年はトップを走行していたにもかかわらず優勝をシューマッハに譲るという非情な指示だったが、バリチェロはいずれも受け入れ、シューマッハのタイトル獲得をアシストした。
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さらに最終戦日本GPまでタイトル争いがもつれた03年は、雨がらみの予選で14番手に終わったシューマッハに代わってレースをリード。タイトル争いで2番手に迫っていたキミ・ライコネン(マクラーレン)を抑えて優勝し、シューマッハの6度目のタイトル獲得に大きく貢献するなど、名セカンドドライバーぶりを演じた。
その後に誕生した偉大な王者たちにも素晴らしい名脇役が存在していた。そんなドライバーがふたり、24年限りでレギュラードライバーの座を退いた。ひとりはバルテリ・ボッタス、もうひとりはセルジオ・ペレスだ。

