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将棋PRESSBACK NUMBER
「初の女性棋士ならず」で埋もれるのは惜しすぎる…観戦棋士が見た西山朋佳vs柵木幹太の舞台裏「しびれた。手が伸びてるね」「妹弟子も棋士室に」
text by

勝又清和Kiyokazu Katsumata
photograph byKeiji Ishikawa
posted2025/02/01 06:00
棋士編入試験第5局での西山朋佳女流三冠。棋士が見た「初の女性棋士ならず」で埋もれるには惜しい舞台裏とは
「15年くらい前だったかな。名古屋のJT子ども大会、高学年決勝で2人が対戦してね、それが大熱戦だったんですよ。2人ともとても強くて、絶対プロ棋士を目指すだろうと思いました。だけど奨励会では苦労したねえ」
柵木は25歳で三段リーグ次点2回をとって四段昇段、フリークラスからのスタートとなっている。宮嶋は成績不振で一度は奨励会を退会しており、再入会してから24歳で棋士になった。
「みんな強いんだけどねえ……将棋界は競争が厳しいねえ」
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と55歳の2人がため息をついた。
さて局面に戻る。柵木にタイミングよく攻められ、西山は打って出るか辛抱するかの判断を迫られた。西山の棋風から攻めると皆見ていたが、飛車を端に寄り、銀を引いて鬼辛抱した。「大きな勝負だからねえ」と本日全対局の立会人である福崎文吾九段がつぶやく。
西山の妹弟子である藤井奈々女流初段が棋士室に現れた。「応援ですか。師匠(伊藤博文七段)は来ないの?」と聞くと「代わりに見に行ってきてと言われました」と笑みを浮かべる。伊藤は弟子にプレッシャーを与えないようにと、ほとんどの取材を断り、表に出ないようにしているのだそうだ。
藤井は西山のことを、盤上では厳しいが、とても優しい姉弟子だと話してくれた。
飛車と銀が使えず苦しんでいた西山だが…
さらに西田拓也五段や、関西の女流棋士たちが次々と棋士室にやってくる。対局を終えた棋士も、帰宅せずこの対局を見守っている。皆が注目している。井田と西田は明日対局じゃないか。朝日杯将棋オープン戦本戦トーナメントの大勝負だというのに。やはり歴史的対局だし……みんな将棋を見るのが好きなんだよなあ。
西山は飛車と銀が使えず、このままではジリ貧だ。しかし、ここから力を発揮する。
〈つづく〉

