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「このまま引退かも」から2年…藤井聡太を返り討ち「ベンチプレス100キロ、握り寿司+鉄火巻で2人前」“筋肉隆々の羽生世代”丸山忠久の素顔とは
text by
田丸昇Noboru Tamaru
photograph by日本将棋連盟
posted2025/01/10 06:01
いわゆる「羽生世代」の1人、丸山忠久。銀河戦連覇とともに、名人、棋王を奪取したことがある名棋士だ
名人戦の対局で勝負が佳境に入る2日目の夕食休憩では、多くの棋士は緊張感から食事をあまり取らないが、丸山は「ビーフステーキ」を注文して関係者を驚かせた。10時と15時に出るおやつのケーキもしっかり食べた。
丸山は将棋会館での通常の対局でも、出前の食事を多く取っていた。マーボー豆腐定食とシューマイ、にぎり寿司と鉄火巻きを1人前ずつ、冷やし中華とチャーシュー3枚、唐揚げ定食+唐揚げ3個などで、食事の合間には栄養補助食品。丸山の旺盛な食欲ぶりが分かるボリュームである。ただ本人は、空腹にならないように留意しているだけで、大食いしている意識はないという。つまり、食事は対局に集中するための手段というわけだ。
22年の9連敗「このまま引退かも…」から通算1000勝へ
丸山九段は、タイトル戦に登場は10回、タイトル獲得は名人2期、棋王1期、棋戦優勝は15回、順位戦でA級に通算14期在籍(名人在位を含む)と、大きな実績を挙げてきた。
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しかし近年は、藤井竜王・名人らの若い世代の台頭と、AI(人工知能)が及ぼす技術革新の影響もあって、あまり目立たない存在となっていた。
22年には公式戦で5カ月も勝てず9連敗した。「このまま引退することになるのかも……」と思ったそうだが、やがて調子を取り戻した。23年12月8日に叡王戦で深浦康市九段に勝ち、10人目となる通算1000勝を達成した。「今後は経験を生かして戦いたい」と、率直な心境を語った。
藤井竜王・名人と丸山九段は公式戦で4局対戦し、丸山が3勝(後手番で2勝)1敗と勝ち越している。
(1)20年7月・竜王戦決勝トーナメント【丸山〇】
(2)21年6月・叡王戦本戦トーナメント【藤井〇】
(3)23年11月・銀河戦決勝【丸山〇】
(4)24年9月・銀河戦決勝【丸山〇】
丸山は藤井に勝ち越している数少ない棋士だが、対局数が少ないので「天敵」とはまだいえない。50代で復活した丸山と20代の若き覇者の藤井との対戦が、また実現することを期待したい。