核心にシュートを!BACK NUMBER
「『もう必要ない』と言われたりもしましたけど」…代表活動は「最後のつもり」バスケ日本代表“諦めない男”比江島慎(34歳)が語る“苦労人の軌跡”
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byFIBA
posted2025/01/11 11:04
アジア杯予選2連戦で「最後の日本代表の活動のつもり」との意向を示した比江島慎(34歳)。2012年の代表選出以降、長らく主力として戦ってきた
世界的に見ても、多くの選手がW杯や五輪のような大きな大会を節目にする。それに対して比江島が、少なくとも2024年11月に組まれていた2試合まではプレーしたいと考えた理由は、「負けたままでは終われない」という生粋の負けず嫌いの性格が、「もう少しだけ」と背中を押したのだろう。
将来的に代表のHCが代われば比江島と代表のかかわり方に影響が出る可能性もゼロではないが、ひとまずは区切りをつけた。当面は、ブレックスでの日常に全てをかけられる。それもまた、幸せなことだ。
思い出すのは、2018年7月、ブレックスでの入団会見だ。海外クラブからのオファーがあれば快く送り出すという条件は、クラブ側からすでに発表されており、ファンにも周知されていた。だから、一般にも公開される形で行なわれた記者会見の席で、ファンからこんな一言が飛んだ。
ADVERTISEMENT
「自分らブレックスファンの意志、総意だと思って聞いてください。この度、『海外挑戦も視野に入れて……』ということなので、たとえこの後、すぐに空港に行って、このままブレックスに帰ってこなかったとしても、自分らブレックスファンはずっと、『ブレックスの比江島慎』を応援するので。そのつもりで(もしオファーがあれば)海外に挑戦してください。お願いします!」
そのあと、万雷の拍手が会場を包んだのは言うまでもない。
代表だけでなくクラブチームでも愛されるワケ
「やはり、少し、恥ずかしかったですかね」
はにかみながら当時を振り返る比江島だが、あの言葉の重みを忘れたことはない。
「嬉しかったですよ。新しいチームのファンの方に受け入れてもらえた、必要とされたので。恥ずかしい気持ちはありましたけど……うん、めちゃくちゃ嬉しかったです」
当面は、そんな幸せな環境のために淡々と汗を流すことができる。バスケが好きで、今もバスケを続けている比江島の幸せはいま、そこにある。
どんな道でも、正解になる。そして、それを正解にできるかどうかはすべて、選手本人の努力と姿勢にかかっているのだ。
では、比江島にとって2021年の東京五輪後から始まったトム・ホーバス体制下で、日に日に日本代表が成長していった時期はどのような意味を持っていたのだろうか。
<次回へつづく>