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「『もう必要ない』と言われたりもしましたけど」…代表活動は「最後のつもり」バスケ日本代表“諦めない男”比江島慎(34歳)が語る“苦労人の軌跡”
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byFIBA
posted2025/01/11 11:04
アジア杯予選2連戦で「最後の日本代表の活動のつもり」との意向を示した比江島慎(34歳)。2012年の代表選出以降、長らく主力として戦ってきた
ただ、年が明けた1月には退団して、ブレックスへ戻ることになった。そして、その7カ月半後に行なわれた中国W杯では5連敗を喫してしまった。それが、冒頭の発言に至ったのだ。
あの言葉の真意を比江島は今、改めて説明する。
「海外移籍もして、日本代表のためにステップアップしたいと思ってやっていたことが、全て裏目になってしまった気がしたんです。良い準備をしてW杯に臨んだつもりだったのに、本当に何もできなかった。チームの足を引っ張ってしまったという感覚だったので。あの年は、自分のバスケ人生のドン底というか、最も悔しい思いをした1年だったかなと思いますね」
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中国W杯では、オフェンスでは得意とするプレーを見破られており、パスを受けたいところで受けることさえ許されなかった。相手選手のフィジカルコンタクトの強度が高く、チームで決められていたディフェンスの動きを頭では理解していたのに、全くといっていいほど実行できなかった。チームメイトに迷惑をかけたと感じた。
勝てなかった2019W杯…惨敗をバネに
それでも――。見落されがちな事実がある。確かに、比江島は口数が多いわけではないし、“天然キャラ”として知られている。
その一方で、実は根っからの負けず嫌いだ。W杯前年に他界した母・淳子さんから譲り受けた性格だと比江島は考えている。自身と3つ上の兄を女手一つで育ててくれた母親は、アスリートに必要な資質を植え付けてくれた。「自信をなくした」という言葉は大げさではなかったが、極度の負けず嫌いである比江島にとって、それはバスケ選手としての停滞を意味するものではなかった。
なくした自信があるのならば、取り戻さなければいけないし、もっと大きな自信を持てる選手にならないといけない。比江島はそう考えていた。
「(一部の人から)『もう必要ない』と言われたりもしましたけど、代表にふさわしい選手だと自分のことを信じていたので。当時はまだ29歳だったし、体は問題なく動くじゃないですか。だから、あきらめる気なんて1ミリもありませんでした。むしろ、その後に予定されていた東京五輪では絶対に活躍してやるとか、そういう想いの方が強かったです」
今、改めて振り返ってみると、W杯の惨敗から必死に這い上がろうとしていたと感じさせられるエピソードがある。