走り終えた後、松崎がクールダウンを終えてゴールとなる西京極陸上競技場に向かうバスに乗り込むと、バスに設置されたテレビ画面の中では、ちょうどアンカーの小嶋卓也が4人からなる3位集団の2番手で走っていた。それを見た松崎がとっさに思ったのは「あとひとり抜けばメダルだ」ということだったという。

「もともと自分たちになんか全然、期待していなかったんですけどね。不思議なもので、いざ良いところを走っているのを見ると欲が出るんです（笑）」

　ただ、自分のチームが全国で上位を走っているという喜びや、これまでの苦労が報われたというような達成感は全くなかったという。むしろ胸の内を占めていたのは「え、こんなに前にいていいの？」という困惑だった。

「寄せ集め集団」初の都大路…その結果は？

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　その小嶋は3位でタスキを受ける前、とにかく緊張したことを覚えているという。

「最初の2kmが下り基調の7区なので、両角先生からは直前に電話で『とにかく抑えて入れ』と指示がありました。だから下りにもかかわらず、最初の1kmは3分以上かかっていたと思います」

　すると、後ろから洛南（京都）、鎮西（熊本）、埼玉栄（埼玉）、東農大二といった有力校が一気に追ってきて、大きな3位集団を形成することになった。ただ、両角監督のアドバイス通りにスローで入っていた小嶋には、終始余裕があった。

「余力はあったので、中間点を過ぎて一気にロングスパートを仕掛けたんです。何校かは振り落とすことができたんですが、地元の洛南だけはついてきてしまって」

　結局、競技場でのトラック勝負にまで縺れ込み、最後の最後で洛南には差し切られた。結果として小嶋は4位でゴールテープを切った。

今では名門となった佐久長聖「初」の都大路は4位入賞という結果でのゴールとなった。アンカーを務めたのは小嶋 ©Getsuriku

「みんな望外の4位で喜んでいたんですけど、自分は抜かれてゴールだったのでただただ悔しかったですね。戦前の自己評価から考えれば大健闘なんですけど……とにかく悔しさしかなかったです」

　それでも入賞など考えもしなかった “駅伝弱小県”の代表として、初出場で史上初の4位入賞。その結果に想像以上の反響が起きていることは、地元に戻って母校で出迎えを受けて初めて感じたという。

「先生たちもみんな学校に残ってくれていて、すごく歓迎してくれて。翌日の地元紙でも1面からでかでかと記事を載せてくれて、優勝したかのような扱いでした。そこで初めて『あれ、結構スゴイことをやったんかな』と」（小嶋）

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