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「内臓がギュッと掴まれてる感じ」フィギュア鍵山優真を襲った“スゴい緊張”…悔やむ鍵山にコストナーコーチの励まし「あー、全日本優勝したい!」
text by
野口美惠Yoshie Noguchi
photograph byAFLO
posted2024/12/13 17:00
フィギュアスケートGPファイナルで銀メダルを獲得した鍵山優真
「演技が終わったあと、ユウマは『あれも直さないと、これも直さないと』と混乱していました。でも私は『ちょっと待って。取り組むのは1つずつで良いのよ』と言いました。自分を否定してばかりでは、前に進めません。最終的に素晴らしいアーティストになるためには、まずは自分を誇りに思うことです。そして自分の弱さを克服していこうとするユウマに、私達が寄り添い、励まし続けることが大切です」
フリーではマリニンを上回る得点
そう語るコストナーコーチに『どんな言葉で励ましたのか』を尋ねると、今回のフリーを例にあげた。マリニンは7本の4回転に挑戦したにもかかわらず回転不足があり、鍵山の得点のほうが上回ったのだ。
「今回のフリーで、ユウマは3本の4回転を降りました。そのあとイリアは7本の4回転を跳んだけれど、結果はユウマが(フリーは)1位。先に結果が決まっている試合なんてありません。演技中にどんなミスが起ころうとも、滑っている間はジャッジのことを忘れて、ただベストを尽くせば良いということを学んだと思います。大切なのは、ミスや失望にどう対応して、最後まで戦い抜くか。イリアの強さは、ミスがあっても『自分は最強だ』と信じて戦っていること。それが、ユウマに必要なこと。自分の強さに自信を持つことです」
それから一夜明けたインタビュー、鍵山は自分の気持ちを整理した様子で現れた。
「今季初めて4回転フリップを降りられたことは、自分の中でプラスに捉えていいと思います。ミスした部分だけを重く考えるんじゃなくて、この大会で何が出来たかというプラスの部分もしっかりと考えることで、全日本選手権に向けて前向きに捉えていきたいです」
そして、こう続ける。
「カロリーナさんも(振付師の)ローリー(・ニコル)さんも、僕が目指しているものに対して、その熱量を受け取って指導して下さいます。ローリーさんからは、いつも試合後に長文のメールが送られてくるのですが、僕がネガティブな方向に考えやすい性格なので、前向きな言葉を送ってくれます。表現力の細かい部分など、自分では気づかなかった新しい発見もあり『自分はまだまだ出来るんだ』と実感させてくれます」
「あー全日本、優勝したい!」
フリーは首位での銀メダル。世界一の壁は、見えるところまで来ている。
「多分、僕よりも周りの人のほうが『この人ずっと銀メダルを取ってるな』なんて思っている。でも僕だって負けず嫌いな部分はたくさんある。そこは貪欲に、上だけを見てやっていきたいです」
インタビューを終え、エキシビションの練習に向かう。その去りぎわにひとこと、本音が漏れた。
「あー全日本、優勝したい!」
いまや実質上の日本のエース。でもまだ全日本のタイトルは手にしていない。全日本選手権で頂点に立ったとき、心の迷いを吹き飛ばすような、エースの自覚が生まれるはずだ。