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海野翔太27歳はなぜブーイングを浴びるのか?「なんか受け入れられへん」大阪で聞いたファンの声…王者ザックは擁護「新日本プロレスの未来だ」
posted2024/11/16 17:02
text by
原悦生Essei Hara
photograph by
Essei Hara
来年の1月4日、東京ドームで行われる新日本プロレス『WRESTLE KINGDOM 19』のメインイベントはIWGP世界ヘビー級選手権試合に決定した。王者ザック・セイバーJr.に、27歳の海野翔太が挑戦する。
だが、10月14日の両国国技館、11月4日のエディオンアリーナ大阪と、ザックの前に姿を現した海野にはファンから大きなブーイングが飛んでいる。東京のブーイングよりは大阪の方が小さかったものの、海野を受け入れようとしないファンは多い。
「なんとなく好きになれへん」リアルなファンの声
「なんか受け入れられへん。なにが、っていうんじゃない。なんとなくなんやけど、好きになれへん」
「オレもそうやね。でも、ドームで海野がザックに勝っちゃったら受け入れるしかないかな」
「うーん……。それはそうなんやけど」
この会話は11月4日、大阪での試合終了後に出口に向かってゆっくり階段を歩いていた若い男性ファン2人の会話だ。「なんか」とか「なんとなく」という抽象的な表現が、逆に多くのことを表しているように思えた。「勝っちゃったら」という所は具体的だが、あとはその内容だろう。海野がザックに勝つことができず、ただの「善戦マン」で終われば、おそらくさらなるブーイングが続くことになる。
ブーイングと大歓声は紙一重なのかもしれないが、それゆえに簡単なことではない。微妙な感覚のズレなのだろうが、それを的確に言い当てるのは難しい。
後ろを歩いていた女性ファンは「プロレスって面白い。また、見に来たい」と話していた。たぶん、初めて見に来たのだろう。4時間にも及んだ“てんこ盛り”の大阪興行は彼女の眼にはそう映ったらしい。印象は人それぞれだ。レスラーが「いい試合」と思っている試合とファンが「いい試合」と感じる試合はイコールではない。記者やカメラマンも違う。ときには大きなギャップさえある。それをレスラーはわかっているようでわかっていないことが多い。
「名勝負? それはお客さんが決めることだから」「見たくなければ来るな!」
ここまで言い切ったのはアントニオ猪木だけだが、プロモーターとしての猪木は「そうは言っても、見たくなければ見に来ないか」と笑っていた。