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仙台育英でも、青森山田でもなく…ホームラン「0」で東北制覇!? 高校野球“伏兵の7年ぶり東北大会優勝”に見る「飛ばないバット」時代の新潮流
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byGenki Taguchi
posted2024/11/11 17:41
7年ぶりの東北大会制覇を達成した福島・聖光学院。下馬評の高かった宮城・仙台育英や青森山田を破っての戴冠だった
「今の2年生が入学した去年の春の段階で、今年から低反発バットが導入されることはわかっていたから、練習からずっと新規格のバットを使わせていたんだよね。そういうこともあって、走塁とか守備、ピッチャーの牽制とか、細かい部分での理解力は例年より高いし、秋の段階での仕上がりは早いと思う」
その横山が、秋を戦う上で掲げているのが「戦力に抗う」である。
これまで、新チームが始動して1か月程度のこの時期は、東北地区のライバルチームとの戦力差を痛感させられることが多かったが、横山は今年、そこに完全否定を決め込んだ。
「相手の戦力を認めてしまうと、結局は負けの言い訳を作っちゃうのと同じなんだよ。他のチームより力がなくても互角以上に戦えるだけの技と心を身に付けて、試合ではやってきたことを出すだけというね。そういうなかで、生徒たちと今年の秋に決めた負けられない理由が、『戦力に抗う』だった」
聖光学院の覚悟に監督が応える。
育成チームとBチームで強固な骨格が形成され、そこに血肉を与えるAチームの監督である斎藤が、横山をはじめとしたコーチ陣に頭を下げるように強く結ぶ。
「横山部長だけじゃなく、うちのスタッフ全員が頭脳をフル回転させてそれぞれのチームを作ってきてくれたからこそ、俺は聖光学院の基本を『より忠実に』って野球を細分化させられるんだ。バットが変わった今年なんかなおさらで、試合での攻防に対して綿密に野球を練り上げていけるよね」
東北大会、聖光学院の前評判は高くなかったが…?
秋の東北大会での勢力図における聖光学院は、決して前評判が高くなかった。下馬評では、140キロ超えのピッチャーを豊富に揃え守り勝つ仙台育英、夏の甲子園ベスト4メンバーが多く残る青森山田が優勝候補だった。
だからこそ横山は、斎藤は「戦力に抗う」姿勢を前面に打ち出す。貫く聖光学院の野球。それが表れたのが準々決勝の仙台育英戦だ。
「この試合、博打すっぞ」
斎藤がチームに、攻めの姿勢を注入する。