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「和田毅は早慶戦のマウンドで…」松坂世代“慶應大4番バッター”が語る、じつは旧友にひっそり告げていた引退決断の真相「珍しく弱音を吐いた」
text by
田中大貴Daiki Tanaka
photograph byJIJI PRESS
posted2024/11/06 11:20
11月5日、引退会見を行った和田毅(43歳)。「松坂世代」最後の一人が、ついにユニフォームを脱ぐ
2007年オフに初めて左肘にメスを入れた。MLBオリオールズ時代にはトミー・ジョン手術を受けた。その後も左太ももや左肩の故障に見舞われ、MLBではわずか5勝に終わった。アメリカの地での思い出はほとんどがリハビリ生活だったと言う。
ソフトバンクへ復帰した後も左肘の痛みに苦しめられた。36歳となった2017年には肘頭骨棘切除術を行い、再び長期離脱を余儀なくされた。「もう無理かもしれない。松坂世代の同級生が続々と引退していく姿を見ていると、自分もその時が近付いているのかもしれない」と、覚悟する時期もあった。
しかし、和田は痛みに本当に強かった。
驚くべきことに、復帰した2019年以降では92試合に登板し、34勝を挙げている。2022年にはストレートの最速は149キロをマーク。なんと41歳でキャリアハイの数字をマークしたのだ。
想像を絶するリハビリ、治療、トレーニング、食事管理により、不死鳥のごとく舞い戻ってきた。だからこそ、再び和田の闘志をマウンドで見られると信じていた。しかし、蝕まれた身体はもう限界を迎えていたのだろう。率直な和田の言葉が、それを物語る。
「身体がもたなくなった。それが全て」
「未練? 自分で決めさせてもらったんですから無いですよ。身体がもたなくなった。それが全てです。ただ、よくここまで持たせたとも言えるかも知れません。引退に未練はあるのかと自分に問いかけ続けました。出てきた答えは過去を振り返り続けるのではなく未来を見ること。これから自分が何で社会に役立ち、どんなことで貢献できるのか。先を見ることでした。強く魅力的で愛されるホークスを引退してからもサポート出来る生き方もある。今までお世話になってきた皆さんに挨拶に行き、これから出会う皆さんと新たな未来を築けるかも知れない。だから僕は先を考えました」