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敗れた張本美和が証言「別人のように強かった…」オリンピアンを次々撃破、女子卓球“20歳の新星”大藤沙月はなぜ躍進? 平野美宇、伊藤美誠にも勝利
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byJIJI PRESS
posted2024/11/03 17:00
WTTチャンピオンズモンペリエで張本美和ら日本の強豪を次々撃破して初優勝を遂げた大藤沙月(20歳)
高校卒業後に成績が急上昇…そのワケは?
「ブレイク」と言ってもいいシーズンを過ごしている大藤は現在20歳。幼少期、コーチをしていた父の影響で卓球を始め、年代別の全国大会で活躍。15歳で出場した2019年全日本選手権の女子ダブルスでは芝田沙季とのペアで準優勝を果たしている。
小学校を卒業すると卓球の名門である四天王寺中学校に進学。2018年には中学2年生で世界ジュニア選手権日本代表に選ばれ、中学3年生になった2019年には全日本選手権女子ダブルス準優勝を成し遂げた。
高校進学後は、新型コロナウイルスにより国内外の大会が相次いで中止となり、またインターハイのシングルスでは一度も優勝できないなどやや停滞した感もあったが、社会人となった2023年以降、再び上昇気流に乗る。パリ五輪代表選考会の東京大会と大阪大会ではともに早田に敗れたが東京で準決勝進出、大阪で準々決勝に進出している。
迎えた今シーズンの充実は、6月のアジア選手権代表選考会での優勝にも表れている。変化の要因を大藤はこう話している。
「この2カ月くらいで、自分の気持ちがポジティブになりました。コーチが坂本(竜介)コーチに代わって、試合でも気持ちの部分で相手に勝てていたと思うので、そこがすごく変わった部分だと思います」
同世代には木原美悠、長﨑美柚ら
気持ちに加え、プレースタイルも変化を志した。パリ五輪代表選考対象の最後の大会だった全日本選手権後、大藤は守りから攻め主体へとスタイルを変えたという。変えるのはリスクを伴う。それでも踏み切ったのは、より強くなりたいという思いがあったからだろう。
アジア選手権選考会に臨む気持ちにも、その一端がうかがえる。
「同世代の木原(美悠)選手や長﨑(美柚)選手が世界選手権に出ているのを見て、『自分も絶対に行きたい』という気持ちがありました」
長﨑は2歳上、木原は同年生まれ。小さな頃から切磋琢磨してきた選手たちはときに壁となり、そして先行して大きな舞台へと進んでいった。それを目にしていく中で、「自分も」という強い気持ちがきっと出てきた。選考会で勝てた原動力であり、それがシーズン全体にもつながっている。