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審判に文句「3年間でイエロー45枚、レッド6枚」31歳ブライトン新監督“やんちゃな選手時代”も…三笘薫27歳が証言する素顔「普段からよく話しますよ」 

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田嶋コウスケ

田嶋コウスケKosuke Tajima

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posted2024/10/26 17:22

審判に文句「3年間でイエロー45枚、レッド6枚」31歳ブライトン新監督“やんちゃな選手時代”も…三笘薫27歳が証言する素顔「普段からよく話しますよ」<Number Web> photograph by AFLO

10月19日、アウェイでのニューカッスル戦。三笘薫は今季初のベンチスタートとなった

「12~16歳であっても、常に勝つことがすべてだった。それがバイエルンのDNAに深く刻まれているから。だが、かつて私が対戦した選手たちからすれば、クソ野郎だったに違いない。試合に勝つことだけを考えていた。審判が間違った判定を下そうものなら、彼らに激しく詰め寄った」

 しかし、セントラルMFとしてプレーしていたヒュルツェラーは、選手として大成しなかった。バイエルン退団後はホッフェンハイムやTSV1860ミュンヘンのセカンドチームを渡り歩いたものの、「足が速いわけでもなく、点を取れるわけでもない。何かが足りなかった」(ヒュルツェラー)。

 そして、23歳でドイツ5部リーグのFCピピンスリートの選手兼監督に就任。この時点で、選手としては事実上引退したが、キャリア終盤の3シーズンで、警告45枚、レッドカード6枚という驚異的な記録を残している。当時は絵画販売のアルバイトもこなし、苦労も多かったようだ。

「恋人と別れることも、遅刻することも…」

 転機になったのは、20年に当時ドイツ2部だったFCザンクトパウリの分析コーチに就任したこと。そこでの手腕が高く評価され、22年12月に監督に昇格した。弱冠29歳のことだ。

 ここからヒュルツェラーは、一気に上り詰める。2部の降格圏付近にいたクラブを、わずか1年半で2部優勝まで引き上げた。そんな青年監督に目をつけたのがブライトン。今年6月、ロベルト・デゼルビ監督の後任として引き抜いたのである。

 ブライトンの指揮官に就任してから、まだ日はあまり経っていないが、シーズンが進むにつれ選手との絆は深まっているという。三笘を含めた選手との接し方について、ヒュルツェラーは次のように明かす。

「私は、今の現役選手たちと同世代。時に、人生で似たような問題を抱えることがある。恋人と別れることもあるだろうし、あれこれ段取りを間違えて遅刻するときだってある。そういうときは、互いに理解し合える。ユーモアのセンスだって似ているはずさ」

 大事にしているのは、選手たちを理解するよう努めること。若さゆえの強みを最大限に生かしていると言えるが、教え子たちとは決して“馴れ合い”にならない。一緒には飲みに行かず、その関係にきっちり線を引いているという。選手にとって非情な決断を下すのも、監督の大事な務めである。一定の距離を保つことの必要性を、ヒュルツェラーが一番理解しているのだろう。

まるで“熱血教師”

 クラブ公式サイトでは、チームミーティングの様子を垣間見ることができる。映し出されているのは、選手たちに熱く語りかけるヒュルツェラーの姿。立ち振る舞いは、さながら生徒思いの熱血教師のようだ。「情熱的な人に見えますね」と三笘に聞いてみると、27歳のアタッカーは「プレミアレベルになると、気持ちのところも持ってる監督は多いです」と言う。

 一方で、意識の高さもうかがえる。愛読書は、スティーブ・ジョブズやマーク・ザッカーバーグといった起業家の「心構えや生い立ち、経験、価値観に関する本」という。会見の質疑応答を眺めていても、理路整然とした彼の説明からは聡明さを感じる。

 同時に、現在欧州で名を馳せている監督たちの研究、分析も怠らない。デゼルビ監督が率いたブライトンのサッカーに惚れ込み、昨シーズンの試合映像はすべてチェックしていたという「サッカー・オタク」の一面も有している。

 勝利に貪欲な熱さと、選手への共感性を持ち、研究熱心でもあるヒュルツェラー。向上心の塊である三笘との相性は良いように映るが、果たして彼らはこれからどんなストーリーを綴っていくのか。本当に楽しみでならない。

【次ページ】 鎌田大地「これだけ勝てないのは初めて…」

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