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「史上最悪のシーズンだったよ」大谷翔平が消えた“エンゼルスの今”…球団ワースト99敗、番記者に聞いた「ファンはオオタニにモヤモヤ」「スタジアムはガラガラ」
text by
田中仰Aogu Tanaka
photograph byGetty Images
posted2024/10/25 17:26
球団ワースト記録の99敗を喫したエンゼルス。筆者は現地アナハイムを訪れた
まず、マイク・トラウトとアンソニー・レンドンという高額契約2人の負傷離脱は大きな痛手だった。だがニック記者は、99敗を招いた致命的原因はオーナーのアート・モレノにあると喝破する。
「ファンはオーナーの判断に不満を抱いている。昨シーズン終了後にオオタニがFAになることは元から決まっていた。加えて、優勝争いをしたい彼が、長年低迷しているチームに残留する可能性が低いのもわかりきっている。問題はそこからだ。シーズン中のトレードで優れた選手を複数人獲得することも、あるいは捨て身でオオタニを残留させることも、どちらもやらなかった。(トラウトとレンドンという)巨額契約の選手がいても、金融面で案を練って準備をするのがオーナーの仕事。言い訳にはならない。そこで何もしなかった結果が、今季の成績に表れた。おかげでアナハイムはガラガラ。5万6000人の席が埋まるドジャースタジアムと違って、食事やビールを買うのにも、トイレに行くのにも並ばないから、エンゼルスタジアムは“素晴らしい”球場と言うこともできるけどね」
「今のオオタニを応援できるファンは少ない」
大谷を手放したことだけでなく、移籍後のビジョンをまるで欠いていた点も批判されているようだ。若い選手たちに有望選手がいればまだ希望が持てる。しかし、ニック記者はエンゼルスの選手育成に対しても手厳しい。
「何人かの選手は良いシーズンを送ったね。たとえば23歳の遊撃手、ザック・ネトや、24歳の捕手、ローガン・オーハッピー。2人の有望選手の活躍は素晴らしいけど、勘違いしちゃいけないのは、彼らの登場は偶然だったということ。エンゼルスの若手育成が功を奏したというわけではなく、運が良かっただけなんだよ。なぜならエンゼルスは、選手スカウトの体制やマイナーリーグの育成、コーチング向上にまったく投資してこなかったのだから。だけど、チームが競争力を取り戻すためには、ネトやオーハッピーのような選手をあと10人くらい育てないといけない」
チームは負け続け、3年後、5年後の明るい未来を想像すらできない。ニック記者が指摘するように、エンゼルスファンはやり場のない苛立ちを募らせているだろう。さらにテレビをつければ――昨年までアナハイムで目が覚めるようなホームランを見せてくれた大谷は――彼らが最もコンプレックスを抱く青いユニフォームを纏い、怒涛のごとく打っている。そして、ドジャースのファンから愛されてもいる。