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マルケス「超巨大な虫がはりついて…」想定外の視界不良が呼び寄せた“王者完全復活”を予期させる追走復活劇 

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遠藤智

遠藤智Satoshi Endo

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photograph bySatoshi Endo

posted2024/10/23 17:00

マルケス「超巨大な虫がはりついて…」想定外の視界不良が呼び寄せた“王者完全復活”を予期させる追走復活劇<Number Web> photograph by Satoshi Endo

オーストラリアGPで2位となったマルティンを従え、トップを快走するマルケス

 不安定な天候の中でシーズンを通じてもっともハイスピードの戦いとなるフィリップアイランドは、MotoGPライダーにとってもっとも転倒リスクの大きいレースとなる。しかもタイトル争いの渦中となればミスは禁物。そんな状況の中で、マルケスは得意とする左回りのレイアウトで圧倒的な速さを発揮してみせたのだ。

 決勝レースのウォームアップを終えてグリッドに着いたとき、実はマルケスにハプニングが起きていた。スタート直前、ヘルメットの「捨てバイザー(薄いフィルム)」に大きな虫が潰れて付着し視界を遮るため1枚捨てることにしたのだが、その捨てバイザーが風の影響で運悪く路面とリアタイヤの間に貼りついた。それを取り除くほどの時間はなく、レッドシグナルが消えてクラッチミートした瞬間、タイヤに貼りついた捨てバイザーの影響でタイヤがスリップし、猛烈な白煙が上がった。

 スタートに失敗して出遅れたマルケスは1コーナーで13位までポジションを落としたが、1周目にして6番手まで浮上する驚速ぶり。その後もぐいぐいとポジションを上げての優勝だった。

虫が演出した追走劇

「グリッド上でティアオフ(捨てバイザー)を捨てちゃいけないというのはルールでは決まっていないが、ライダーたちとの話し合いでなるべく避けるようにしようということになっていた。でも、今回はスタート直前に大きな虫が貼りついて選択の余地がなかった。大きな虫が目の前にあって、まるで映画のスクリーンを見ているようだった」

 その結果の追い上げは、図らずも世界中のファンを喜ばせることになった。マルケスにとっても、この優勝は絶対王者復活とライダーとしてのポテンシャルの高さを存分にアピールするものだった。

【次ページ】 ハイスピードコースで連勝なるか

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