酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
阪神監督就任の9年前「高知に行くことにしました」藤川球児のサプライズ独立L入団は「名解説者の片鱗が見えていた」取材した記者が感じたワケ
posted2024/10/20 17:00
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph by
Kou Hiroo
2012年オフに海外FA権を行使してMLBに挑戦していた藤川球児が、テキサス・レンジャーズをDFA(実質的な戦力外)になったのは、今から9年半前、2015年5月のことだった。MLB在籍中にトミー・ジョン手術を受けた藤川は十分に力を発揮することができなかったが、恐らくは古巣・阪神タイガースに復帰するものと誰もが思っていたのだが――。
高知の入団会見で見せていた「名解説者の片鱗」
6月、藤川は独立リーグ四国アイランドリーグplusの高知ファイティングドッグスに入団すると発表した。高知は藤川の故郷であり、藤川の兄は高知球団のGMを務めていたこともあった。しかしNPBのスター選手であり、メジャーリーガーだった選手が、いきなり独立リーグとは、野球界は色めき立った。
6月8日、高知市内のホテルでの記者会見には、キー局のテレビカメラなど多くのメディアが詰めかけた。四国アイランドリーグPlusの側も、球団トップだけでなく、リーグトップの鍵山誠代表も出席していた。
「いろいろな思いがあって、この日を迎えることができたのは光栄に思います。これからやらなきゃいけないことは重大で、責任のあることなので、日々のトレーニングにはものすごく力が入っています。僕の中では、新しい人生のスタートとしては、最高の決断ができたんじゃないかと思っています」
藤川はそう切り出した。そのあとに、「先ほど、僕の身長を182cmと紹介いただきましたが、正しくは184cmあります」と付け加え、笑いをとった。
今にして思えば、藤川のトークは現役の野球選手とは思えないくらい明晰で、気が利いていた。「名解説者」としての片鱗は、この時に現れていたのだ。
このあと、藤川は高知球団と登板する1試合ごとに契約する形態であること。報酬は受け取らないこと。そして藤川が出る試合の入場料収入の1割は児童養護施設などに寄付することが紹介された。
阪神ではなく高知…生まれ故郷であるから
記者団からの「なぜ、タイガースではなくファイティングドッグスを選んだのか?」との問いに対して、藤川はこう答えた。