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「薬物はダメ。自分の家庭もそれで壊れてる」YA-MANの思い…大麻容疑で逮捕、木村“フィリップ”ミノル「格闘技界から永久追放」の可能性は
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byFIGHT CLUB
posted2024/10/12 11:00
YA-MAN(左)と大麻取締法違反容疑で逮捕された木村“フィリップ”ミノル(カード発表会見にて)
「それで大麻に逃げたんじゃないですか」
本来なら裁判の結果を待って評価すべきだし、たとえば芸能界などでは復帰のチャンスもある。しかし繰り返すが格闘技界において、木村の場合においては事情が違う。
業界では、結果として陰性だったとはいえ平本蓮の“ドーピング騒動”もあった。不用意な行動もありイメージはよくない。イメージといえば、不良(上がり)たちが出場するイベントへの逆風は常にある。そういう状況があっての「有名格闘家が試合直前に大麻で逮捕」なのだ。
YA-MANは、木村の気持ちの弱さを指摘した。
「俺がカーフキック蹴るって言ったから怖がって、それで大麻に逃げたんじゃないですか。何かにすがらないと生きていけないんですよ」
木村の弱点はメンタル。ドーピングが発覚した時も、それ以前にも言われてきたことだ。圧倒的なKO劇を見せることがある一方、相手が粘り展開がもつれると失速する。ピンチになると挽回できない。周囲を呆れさせる“奇行”もあった。
ドーピングでの出場停止期間中にRIZINの会場に現れ、安保瑠輝也に対戦要求されると、客席でTシャツを脱ぎポージングで応えた。榊原信行CEO曰く「凄い人だなと(苦笑)。開き直ってるんですかね」。ブアカーオ戦が決まると「ドーピングはブアカーオも怪しいんじゃないか。僕は言える立場じゃないけど」とも。こうした姿を、筆者は気の弱さゆえの“逆ギレ”だと見ている。
「薬物はダメ。自分の家庭もそれで壊れてる」
「何やってんだよ」
木村の逮捕、その最大の“被害者”であるYA-MANは憤り、また呆れてもいた。
「薬物はダメです。自分の家庭もそれで壊れているので」
物心ついた時には、父親は家にいなかった。薬物依存。服役していたのだ。父方の実家から振り込まれた養育費は、母の両親が持ち逃げした。少年時代は喧嘩に明け暮れる。そういう環境から抜け出すことの大切さを、YA-MANは試合のたびに訴えてきた。
児童養護施設や自分と同じ母子家庭世帯への試合チケットプレゼントも個人で行ってきた。そんなYA-MANにとって、大麻所持で逮捕され試合を“飛ばす”など許せることではなかった。
木村が謝罪の意思を見せたら受け入れるかと聞かれ、彼はこう答えている。
「謝罪されたところで何もないので。(謝罪に)こなくていいんじゃないですか。もう関わる気はないです」
この試合、カード発表会見でYA-MANが木村にドーピングはもうやめたかと確認。木村は「神に誓ってやってない」と返し、ドーピング検査なしで実施されることになっていた。それはそれで「実際のところどうなのか。試合での木村の体つきは?」という下世話な興味を誘ったりもしたのだが、しかしそれもすべて吹っ飛んだ。