濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
「薬物はダメ。自分の家庭もそれで壊れてる」YA-MANの思い…大麻容疑で逮捕、木村“フィリップ”ミノル「格闘技界から永久追放」の可能性は
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byFIGHT CLUB
posted2024/10/12 11:00
YA-MAN(左)と大麻取締法違反容疑で逮捕された木村“フィリップ”ミノル(カード発表会見にて)
YA-MANvs.木村が“なくなった”大会はどうなったか
代替選手との対戦、あるいはエキシビションができればとも言っていたYA-MANだったが、とにかく時間がなかった。大会当日はリングに上がることなく、中継の解説を務める。自分の試合がなくなったことを受け止め、気持ちを切り替えて他の試合を盛り立てようと考えたそうだ。
中継は無料配信となり、そのぶん気軽に見やすいものとなった。その中で“繰り上がりメイン”のYURAvs.木村“ケルベロス”颯太が好勝負となる。序盤からスリリングな打撃戦となり、ケルベロスが先制のダウンを奪う。そこからYURAが盛り返してダウンを奪い返し、逆転のKO勝利。
BreakingDownで名を売った実力派・YURAに対して、YA-MANはタイトルマッチでの対戦を示唆した。また敗れたケルベロスに対しても「評価は下がってない」と称えている。ケルベロスは前回大会の会見で朝倉未来たちにさんざん言い負かされ、チワワ呼ばわり。今回も結果を出せずにうなだれたが『FIGHT CLUB』で求められる闘いをしたのは間違いない。意地を見せたのだ。
彼らのファイトが大会の救いになったし、この状況で持ち前のユーモアを発揮してみせたYA-MANにも驚いた。大会後の囲み取材で、彼はこんなことを言っている。
「逮捕されたのを知った瞬間(減量をやめて)ラーメン食べましたよ。勾留されるから試合はないなって。それから頭を整理しようと思ってコンカフェに行って。頭は整理できたけど、今度は責任感でゲロ吐きました」
「(この騒動で)人間として成長できましたね。もうこんなことはねえだろって(笑)。何が起きても動じないっすよ。相手が計量オーバーしても“なんだ計量オーバーか”って」
格闘技界からの“永久追放”の可能性は
大会の顛末を取材した者として言えば、試合がなくなってもYA-MANの魅力を感じることができた気がする。ただ木村ミノルの今後に関しては、また別に考えなくてはいけない。
YA-MANと木村が対戦することはもうないだろう。多くのファンは、格闘技界からの“永久追放”を望むのではないか。ただ、それが可能な業界かどうか。
格闘技界には、たとえばJOCや全柔連のような統一組織がない。全団体一律の処分というものができないから、たとえば『FIGHT CLUB』やRIZINからのオファーがなくなっても、どこかの団体が木村を起用する可能性はある。批判されても話題性を取る、というビジネスのやり方もなくはないだろう。海外に渡るという手もある。
ドーピング違反の際は、規定のない団体で試合をするよりはと、RIZINが再検査を課して監視、管理する方向性だった。しかし(現状、処分は発表されていないが)逮捕という事態に至ってしまってはどうなるか。必要なのはペナルティかバックアップか。いずれにしても、今回の件が格闘技界に有形無形のダメージを与えたことは間違いない。