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「石川祐希と高橋藍が合流すると出番が減って…」男子バレー“13番目の選手”富田将馬(27歳)の再出発「楽しかった小川&ラリーとのパリ生活」
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph byVolleyball World
posted2024/10/10 11:02
リザーブメンバーとしてパリ五輪に参加した富田将馬(27歳)。この経験を4年後に生かすべく、新天地で迎えるシーズンへの意気込みを語った
もともとサーブレシーブや守備力には定評があったが、それだけでは生き残ることはできない。課題としてきた前衛での攻撃力向上や、サーブ力を磨き、合宿時から好調を維持し続けた結果、ブラジルで開催されたネーションズリーグの初戦でチャンスを掴んだ。
アルゼンチン戦にスタメン出場すると、攻守にわたり大活躍を見せて勝利に貢献。ただ、コートでは笑顔が目立ったが、内心は「焦りしかなかった」と振り返る。
「自分の良し悪しだけでなく、周りも気になる。何より、ギリギリまでオリンピック出場をかけたポジション争いをすること自体が初めて。ストレスも感じていたし、力も入るし無茶もする。『ケガをしないように』と心がけながらも、多少どこかが痛くても少しぐらいなら大丈夫だ、と言い聞かせていた。毎日ギリギリでした」
「石川祐希と高橋藍が合流」で増す焦燥感
状況が変わり始めたのは同じアウトサイドヒッターの石川祐希と高橋藍が合流した福岡ラウンドから。2人の出場機会が増える一方で、富田の出番は減り、アピールの場も限られる。それまでとは比べられないほど焦燥感が先行した。
決定的だったのが、6月7日のポーランド戦だった。この試合で富田は福岡ラウンドで初のスタメン出場を果たすが、「ここで結果を出さなければ」と前のめりになりすぎた結果、ブロックポイントを献上するなど精彩を欠いてしまった。さらに、追い討ちをかけたのが第2セットで交代した大塚達宣が見事なまでにアピールに成功したことだった。この試合を機に、大塚の出場機会が増えていく。
福岡に続いて行われたフィリピンラウンドを終えた夜、選手全員が一堂に会したミーティングの場で、パリ五輪に出場する12名が発表された。あのポーランド戦がすべてだったわけではないことはわかっている。ただ、そこに富田の名はなかった。リザーブとして登録される「13番目」に名前を呼ばれた。
「ただただ自分で噛みしめて、受け入れるしかない。正直、厳しかったです。でも13番目とはいえパリには行けるので、自分のやるべきことをやろう、とも思った。比較的すぐに切り替えることはできました」
真の意味での「13番目」の難しさ、見えない壁を思い知らされたのは、パリに入ってからだった。