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三笘薫との約束「俺の記録を超えろ」を胸に…“2年目で15ゴール”川崎F・山田新なぜ覚醒?「得点王も狙える」「まだまだ足りない」24歳の渇望
text by
いしかわごうGo Ishikawa
photograph byJIJI PRESS
posted2024/10/08 11:05
10月5日のJ1第33節、今季15点目となるループシュートを決めた川崎Fの山田新(24歳)。得点ランキングでは日本人トップの3位タイにつけている
三笘薫の激励「俺の記録を超えろよ」
町田戦後のミックスゾーン。
この日の山田新に、どうしても聞きたいことがあった。いち早く呼び止めたのだが、次の瞬間、あっという間に人だかりができてしまい、その場で尋ねるのは試合内容のことだけに留めておくことにした。
聞きたかったこととは何か。
話は山田がプロになる前年の2022年まで遡る。
当時、桐蔭横浜大学の4年生だった彼は、通っているジムでアルバイトをしていた。ある日、そこに帰国していた三笘薫が現れたのだという。
同じ川崎フロンターレのアカデミー出身の先輩だ。ただ三笘が3学年上のため、一緒にプレーした経験はなかった。アカデミー卒業後の三笘がOBとして練習に参加したことは一度だけあったが、そこで会話らしい会話を交わした記憶もなかった。
大学を経由して川崎でプロになり、海外でプレーする日本代表・三笘薫は、山田にとって憧れの存在だった。自身のプレースタイルを模索していた大学時代は、筑波大時代の三笘がどんな姿勢でサッカーに取り組んでいたのかを研究していたほどだ。
その憧れの三笘が、突然、自分の目の前に現れた。
翌年から川崎に加入することは公表されていたが、三笘が自分の存在など知るはずがない。「来季からフロンターレに加入する、アカデミー出身の山田新です」と恐る恐る挨拶したところ、「知ってるよ」と優しく笑ってくれた。そして、こんな言葉をもらった。
「俺の記録を超えろよ」
三笘が口にした「俺の記録」とは、ルーキーイヤーの2020年にマークしたリーグ戦13得点を指している。J1リーグの新人最多得点記録であり、翌年からフロンターレのユニフォームに袖を通すことになる後輩ストライカーへのシンプルな激励だった。
山田は咄嗟に「いやいや……」と謙遜してしまったが、入団会見では目標を二桁ゴールに設定している。その数字を強く意識してピッチに立ち続けたが、終わってみれば4ゴール。ルーキーイヤーの昨年は、二桁にも及ばぬまま幕を閉じている。