“口下手な変人”はRIZINの救世主になれるのか

　前バンタム級王者の朝倉海はUFCに移籍した。その王座を狙う急先鋒としてレスリングの五輪銀メダリストである太田忍の存在が注目されていたが、『RIZIN.48』ではかつて辛酸を舐めさせられた元谷友貴に返り討ちにあい、急ブレーキがかかってしまった。

　戴冠したばかりだというのに、井上は大晦日での初防衛戦を希望する。もし実現するならば、太田に勝った元谷、あるいはこの日元RIZINフェザー級王者の牛久絢太郎を理詰めの展開で下したベテランの佐藤将光が有力か。佐藤は今年3月に井上と激突。期待に違わぬハイレベルな攻防の末、井上が判定で勝利した。

　ダークホースは『RIZIN.48』で金太郎を撃破して鮮烈なRIZINデビューを飾ったジャパントップチームの18歳・秋元強真か。これから間違いなく伸びてくる逸材ながら、「タイトルマッチまで、あと数戦見てみたい」と思うのは筆者だけではあるまい。

　朝倉未来が引退を表明したことで、ここまでRIZINを牽引してきた朝倉兄弟は揃っていなくなってしまった。未来をTKOで撃破した平本蓮も“ドービング疑惑”で味噌をつけた。堀口恭司の去就もハッキリしない現在、「RIZINのエース」の席はポッカリと空いたままだ。現状ではフェザー級王者の鈴木千裕が最も近い存在と思われるが、バンタム級王者となった井上のプレゼンスも急激に高まっている。

新王者としてRIZINを牽引することができるか　©Koji Fuse

　もっとも、次のタイトル挑戦者について質問が飛ぶと、井上は「誰が（挑戦者として）いるかわからない」と苦笑まじりに答えた。チャンピオンとしてトークを磨いていくかという問いには、「まあちょっとそうですね。ネタがあれば。頑張ります」と答えになっていないような答えを口にした。

　闘いの舞台では通も唸らせるテクニシャンながら、口の方まではテクニシャンとはいかないようだ。いや、それでもいろいろなキャラクターのチャンピオンがいていい。“口下手な変人”井上直樹は、RIZINの救世主となれるのか。