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2度の流産、死産…“最後のアイドルレスラー”納見佳容(46歳)が初めて語る“壮絶な引退後の日々”「罪悪感に苦しみ、何度もスーパーで座りこんだ」《全女BEST》
text by
伊藤雅奈子Kanako Ito
photograph byYuki Suenaga
posted2024/09/22 19:00
2004年の引退後は不妊治療を経て、流産、死産も経験。納見佳容さんが、メディアに初めて明かした
判明したポッター症候群「出たら数分か数時間の命です」
――子どもはどうしても、2人以上ほしかったんですか。
納見 私は幼いころ、姉にすっごく助けられたんですよ。4歳のときから両親が飲食店を経営しはじめて、月曜日から土曜日までは、夕方4時から深夜12時まで親がいない状態。めちゃくちゃ明るい姉が親代わりで、母が作ってくれてたごはんを温めてくれて、お風呂を用意してくれて、私を布団に入れるところまでやってくれて、小学校にあがれば宿題もみてくれた。私は寂しくてすぐ泣くし、姉だってまだ小学生だから、大変だったと思う。子どもにとっていい環境ではなかったかもしれないけど、私は上京するまでそうやって育ったから、姉の存在がめちゃくちゃ大きいんです。だから、自分が家庭を持ったらきょうだいがほしいなって思ってた、ずっと。
――なるほど。
納見 でも、3回目で死産となったので、ついに心身が折れたというか。安定期とされる妊娠6カ月に大きな病院で検査になって、ポッター症候群だといわれたんです。赤ちゃんの腎形成が不全なので、おしっこが作られない、羊水過少なので肺形成ができない、と。お医者さんから言われたのは、「お腹のなかでは生きられるけど、出たら数分か数時間の命です」と。そうなると、私は何をしないといけないのかというと、妊娠の中断……ですね。それか、数分・数時間しか生きられないけど、お腹のなかで育てて、出産するか。
――悲しすぎる2択ですね。
納見 ただ、これは9年前のことで、今の医療は変わっているだろうから、あくまでも私の場合は……ということで聞いてほしい。結局、「出してあげる」ほうを選びました。担当の先生は、上の子を取りあげてくれた方だったので、すごい信頼していたし、病気のことも一生懸命説明してくれました。主人は「助かりませんか?」「どういうことですか?」「手術できませんか?」って、普段はニュートラルで落ち着いている人なんだけど、そのときは何度も聞いてましたね。
罪悪感に苦しむ日々「何度スーパーで座りこんだか…」
――男性は、あがくことしかできないから。
納見 そうですね。で、出産。無痛分娩で、産む前にいろんな処置を受けるんですね。陣痛促進剤を打ったり、子宮口を広げるためにラミナリアという器具を入れたり。その過程で赤ちゃんが亡くなってしまった、という話でした。出産を終えて、麻酔が覚めたら先生から、「息を引き取っていたけど、すごいきれいな状態で出てきてくれたよ。今、連れてくるね」って言われて、会えて。すっごいちっちゃいけど、かわいい普通の新生児の男の子だった。胸の上で両手をちょこんと重ねてね。ほんっとにきれいな顔で、きれいな指。小さい箱に入っているんだけど、今にも泣きだしそうで。
――……。
納見 (病室の)周りからは赤ちゃんの泣き声が聞こえてきて、希望でいっぱいなんですよ。そのなかで、自分だけがこういう手術になったことを受け入れられなくて、感情がどっかに行っちゃった。ここにいるのがつらくて、放心状態になって、どうやって帰ったのかも覚えてないけど、ただ赤ちゃんはすっごいかわいかった。その記憶しかない。次の日には、火葬でした。でも、ほんとに大変なのはそこからで……。