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野ボール横丁BACK NUMBER
高校野球ホームラン激減、“最少”7本のウラで…じつは違反バットが続出していた「密告合戦やめましょうよ」地方大会では「“無名メーカー”バットがブーム」
text by
中村計Kei Nakamura
photograph byJIJI PRESS
posted2024/09/13 11:45
金属バット導入後、“過去最少”ホームラン7本だった夏の甲子園。写真は神村学園・入来田華月。「隠れたベストセラー」マルチのバットでホームランを放った
星 ハイゴールド、シュアプレイ、ザナックスはまだ販売されてすぐの段階だったので、そこまで大変なことにはなっていないと思います。僕もシュアプレイのバットはものすごく飛ぶ印象があったので、仕入れようと思っていたのですができなかったんですよね。他のメーカーのものもそこまで出回っていなかったので、大きな混乱はなかったんじゃないですかね。どういう経緯で各社のルール違反が判明したのかわからないのですが、いずれにせよ違反していたのは数本というレベルだったのだと思いますよ。金属バットは、それくらいの誤差はどうしても生じてしまうものなんです。重さもそうなんです。今回、900グラム以上という基準が設定されましたけど、900ジャストで作ろうとすると、どうしてもそこを下回るバットが出来てしまう。全部が全部、想定のグラムになるわけではないんです。僕は10グラムぐらいの誤差は許容範囲だと思っているんですけどね。
――規定違反に関しては6月にはイーストン、ミズノ、ゼット、7月にSSKのバットが音響の基準値に違反しているとのことで、やはり回収騒動が起きました。
星 あれもちょっとした事故のようなものです。イーストンとゼットの打球音は気持ちいいよねという評判をよく聞いていたんです。そうしたら、最初に納品されたバットの一部にややハイトーンなものが含まれていたようです。ただ、それもそこまで出回っていたわけではないですし、キャップを外して、スポンジの位置を少しずらせば改善できるので、そこまでの混乱は起きませんでした。ミズノもSSKもやや音が高いものがあったようです。ミズノは全回収になりましたが、SSKは店に出す前だったので不幸中の幸いでした。
――いずれのメーカーも確信犯というわけではないのですか。
星 わざわざ違反バットをつくるところはないと思います。検査したらバレてしまうので。バットの厚さも音の高さも金属バットの特徴を把握していれば多少の誤差は理解できます。当然、起こり得ることだし、そんなに悪質なものでもないんです。なので、あまり大きな声では言えませんけど、僕は、メーカー同士でチクり合うのはもうよしましょうよ、と言いたいんですよ。おそらく、これだけ数珠つなぎに違反バットが出てきたのは、そういうことなんですよ。バットの基準が変わり、どのメーカーもシェア獲得に躍起になっています。だから、疑心暗鬼にもなるし、かなりナーバスになっているのはわかるんですけど。僕らも迷惑しますし、ユーザーにも迷惑がかかる。誰も得しないんですよ。
地方大会でブーム…「隠れたベストセラー」とは?
――ちなみにホームランバットリストにある「マルチ」って、確か、選抜大会のときもチラホラつかっている選手がいましたよね。