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<龍角散presents エールの力2024⑥>秋田ノーザンハピネッツの田口成浩は、勝負の行方を左右する「声援の怖さ」を知っている。 

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矢内由美子

矢内由美子Yumiko Yanai

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photograph byAKITA NORTHERN HAPPINETS

posted2024/09/20 11:00

<龍角散presents エールの力2024⑥>秋田ノーザンハピネッツの田口成浩は、勝負の行方を左右する「声援の怖さ」を知っている。<Number Web> photograph by AKITA NORTHERN HAPPINETS

「俺も(NBAの)サマーリーグに挑戦した時に、3試合連続で1分も出なかったことがある。まあ、こういうのは誰でもあるよ。俺も経験あるんだし、当たり前だろ」

 頭をガツンと打たれた気分になった。

「あいつ、『俺でもあるんだから』なんて、ふざけたネタのように言ってきて(笑)。でも、その時に熱い言葉でカツを入れてもらって、気持ちを切り替えられたんですよ。その言葉を聞いてやってやろうと思ったし、次の試合で見返してやると思いました」

 翌日の三遠ネオフェニックス戦。田口は途中出場ながら第1クォーターのブザービーターを含めて10点を決め、ブロックショットも披露する活躍。チームの勝利に貢献し、その試合のMVPに選ばれた。

ブースターと一緒に新たな景色を

 bjリーグからBリーグになった2016年、26歳で秋田のキャプテンに就任した。当時は若い選手を引っ張り上げる先導型のスタイルでリーダーシップを発揮した。特にB2でプレーした2017-2018年シーズンは1分、1秒のすべてを「1シーズンでB1に上がる」ことに捧げ、「嫌われてもいい」と、ピリピリと張り詰めた空気を醸成していた。

 それから7年。34歳になり、初めてチーム最年長となった今シーズンは自身2度目のキャプテンを任されている。今は選手たちを下から押し上げるようなスタイルへと変化しているが、それはブースターとの関係性にも重なるところがあるようだ。

「秋田のブースターにはオーラがあります。勝ちにこだわるし、内容もこだわりたいという方々が多いと思います。年齢層も幅広い。秋田のブースターに見られているんだと思うだけで、僕らは押し上げられていると思うんですよね。僕らの使命は、選手がコートでもベンチでもお祭りのように盛り上がることで、ブースターの方々が一緒に熱狂したくなるようなパフォーマンスをすること。だって、僕らは『クレイジーピンク』ですからね」

 今シーズンは元フランス代表のヤニス・モランら有力選手が加わるなど、顔ぶれも一新している。

「今季の目標はチャンピオンシップ出場。僕らにはまだ見たことのない景色があります。レギュラーシーズンでは38勝を最低限のベースとしてその数字をクリアし、チャンピオンシップに出る。そしてまずは1つ勝って、次のステップに行く。その目標に向かって突き進みます」

 ブースターと一緒に新たな景色を見ることを目指している田口。秋田の挑戦が楽しみだ。

田口 成浩Shigehiro Taguchi

1990年3月25日生、秋田県出身。明桜高校(現・ノースアジア大学明桜高校)入学後、バスケットボールを本格的に始め、2009年岩手県の富士大学に進学。東北大学バスケットボールリーグで活躍し、2012年bjリーグのアーリーエントリー制度で秋田ノーザンハピネッツ加入。以来、中心選手としてチームを牽引する。2018-2019シーズンに千葉ジェッツに移籍。3シーズンを千葉Jでプレーし、2021-2022シーズンに秋田に復帰した。184cm、86kg。

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