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「めっちゃいいチームだよ」現役ドラフト移籍、DeNA佐々木千隼投手を救った言葉…「30歳、まだまだできるよ!」背水の陣で変えたものとは
text by
石塚隆Takashi Ishizuka
photograph byJIJI PRESS
posted2024/09/09 11:02
ロッテから現役ドラフトで移籍してきた佐々木千隼。今季はブルペンの一角として復活を遂げたといっていいだろう
「このチャンスをものにしないと終わってしまう、とずっと思っていました。だからこそ、これまでトライしてこなかったことにいろいろチャレンジすることができたんです」
このシビアともいえる環境の変化は、プラスになりましたか、と尋ねると、佐々木は大きく頷いた。
「ピッチャーとしてめちゃくちゃプラスだったと思います」
今季、忘れがたい光景がいくつかあった。ひとつは6月12日のロッテ戦、佐々木は愛着のあるZOZOマリンスタジアムのマウンドに立った。ビジターの選手としては異例の登場曲が流れる中、多くのロッテファンから大歓声を浴びた。
「めちゃくちゃ嬉しかったですね。ちょっと泣きそうになりました」
そして8月27日の阪神戦では、初めて横浜スタジムでお立ち台に立った。闇夜に浮かぶハマスタのスタンドはとても美しかった。
「本当、ベイスターズファンの方々も温かくて……いい景色でした」
誰も優勝を諦めていない
いずれも移籍がなかったら、見られなかった光景だ。日本シリーズでロッテと対戦したいですね、と伝えると、佐々木は「はい!」とこの日一番の笑顔を見せた。
ペナントも大詰めを迎えているが、言うまでもなくやることは変わらない。どんな場面であっても、マウンドで腕を振るだけだ。
「与えられた役割を全うするだけです。誰もリーグ優勝を諦めていないので、そこを目指してやっていきたいと思います」
7日の巨人戦(東京ドーム)、延長の12回裏、回またぎでマウンドに立っていた佐々木は、二死からオコエ瑠偉にサヨナラ本塁打を浴び、膝をついた……。目を伏せ落胆するその背中に、ナインは声を掛け激励した。大事な試合ではあったが、これまでの貢献度を鑑みれば信頼が揺らぐことはない。ぎりぎりの勝負がつづく秋、酸いも甘いも噛み分けボーダーラインを生き抜いてきた、佐々木の更なる底力に期待したい。