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「めっちゃいいチームだよ」現役ドラフト移籍、DeNA佐々木千隼投手を救った言葉…「30歳、まだまだできるよ!」背水の陣で変えたものとは
text by
石塚隆Takashi Ishizuka
photograph byJIJI PRESS
posted2024/09/09 11:02
ロッテから現役ドラフトで移籍してきた佐々木千隼。今季はブルペンの一角として復活を遂げたといっていいだろう
今季、ここまでの成績は22試合に登板し、0勝1敗、3ホールド、防御率2.10(9月9日現在)。前述したように、一筋縄ではいかないあらゆる場面でチームを救ってきたが、このスタッツからは、キャリハイとなる54試合、8勝1敗、26ホールド、1セーブ、防御率1.26を記録した2021年以来となる奮起が見て取れる。DeNAに移籍する前の2年間はコンディショニングの不良などにより思うように力を発揮できなかったが、今季は春先にファームで17試合を投げ、防御率0.93といった数字を残すと、5月下旬に一軍に昇格している。
復活というべきか、明らかな変化が感じられるわけだが、DeNAに来てなにが起こったのだろうか。
そう問うと佐々木は宙を睨み、言葉を選ぶように語りだした。
「取り組みを全部変えたというか、これまでやってこなかったことを、とにかく全部やってみようって」
数値化でフォームを改善
自分を変えなくてはいけない。佐々木は、この数年やっていなかったウェイト・トレーニングを再開したり、フォームの基礎的なドリルから、データを使っての見直しなど、DeNAの最新技術や施設を活用し、スタッフとともに新たな自分を模索した。
「特にフォーム面での数値化というのは、これまであまりやってきませんでした。データを取ると、例えば左足が流れるとか、右足の蹴り込みが弱いとかが数字として出ていたので、そこを改善して、機能性を高めるという作業を話し合いの中でしてきましたね」
新たな取り組みによりフィジカル面とメカニクスで、自分の問題点を埋めることができた。情報過多となり、データに振り回されてしまうのは危険なことだが、佐々木はキャリア8年目であり、実戦経験も豊富なことから自分の感覚や状態を鑑み、最適化を求めるにあたって取捨選択することができたのは大きかった。
「特にフォームに関しては見直しと自分の感覚のすり合わせがだいぶ上手くいったと思います。またコンディション面で言うと、プロに入って一番いいのかなって感じていますね」
少しだけ自信を漂わせ佐々木は言った。30歳になっても、まだまだ伸びしろはある。ファームの入来祐作チーフ投手コーチからは、指導を受けながら「30歳なんて、若いんだからまだまだできるよ!」と発破をかけられたことを、佐々木は笑いながら教えてくれた。
「何でもトライをすること。それがいい方向に繋がりましたね」
そのしみじみとした様子からは、プロ野球選手として戦える喜びが滲んでいた。