ピッチングの面で言うと、佐々木は自他ともに認めるスライダーピッチャーである。変化球は他にもフォーク、シンカー、シュートとあるが、スライダーはストレート以上の使用頻度で多投している。球速のアベレージは約120キロ、チェンジアップにも似た独特の軌道を描き、巧みにゾーンの出し入れをして、左右関係なく打者に対応できる。ファウルも取れれば空振りも狙える、佐々木にとって生命線となるボールである。

「スライダーに関しては自信を持って投げていましたが、特にDeNAに来てからは、先ほど言ったようにデータを上手く活用できています。数値がこうだったから打たれづらい、こういう数値だったから今日はヒットを打たれた、と可視化できたのは自分の中では大きな発見でした」

独特なスライダーの威力

　バッテリーを組む山本祐大は、佐々木のスライダーについて次のように証言する。

「千隼さんならではの独特なボールだと思います。キャッチャーとして受けることはもちろん、以前打者としても対戦しているのですが、すごくタイミングが取りづらいんですよ。なかなか来そうで来ないというか、中途半端に手が出てしまう。そういう意味では非常に対応は難しいと思いますね」

正捕手として佐々木の投球を受ける機会も多い山本祐大　©Kiichi Matsumoto

　またストレートのアベレージは140キロ前後だが、キレと伸びがあるため、スライダーを生かすことができている。さらに昨年秋に習得したシュートを、右打者の内角へポイントポイントで差し込むことで、ピッチングの幅を広げることに成功した。

　そんな快投を支えているのは、やはりマインドの部分だと佐々木は言う。この数年、失速しつつあった心のエンジンが、スパークしているのを実感している。

「大事なのは自信を持って投げること。やっぱり弱気になったら、その気持ちがボールに伝わってしまいますからね」

　佐々木のマウンドでの振る舞いについて前出の山本は言う。

「千隼さんは、自分自身を持っているというか、こう投げたいという想いをしっかりと伝えてくれるのでやりやすいんです。あれだけいろんな場面で投げているピッチャーがそれをするのは、本来すごく難しいこと。経験豊富ですし、どんな場面であっても落ち着いて冷静に投げる姿は心強いですね」

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