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「大好きな人たちですが…」武居由樹と比嘉大吾“じつは同門”日本人対決なぜ面白い?「クセがある」「全部わかってます」両陣営“バチバチ”の理由
text by
渋谷淳Jun Shibuya
photograph byHiroaki Yamaguchi
posted2024/09/02 11:03
WBO世界バンタム級王者の武居由樹と、2018年以来の世界戦に挑む比嘉大吾。8月31日の会見では両者の口からKO宣言が飛び出した
つまり比嘉と武居、八重樫トレーナーは野木トレーナーの指導を受けた“同門”であり、それが「仲間意識」「不思議な感じ」というコメントにつながっている。両者の対戦が決まって以降、大橋ジム勢は野木トレへの参加を中断した。普段は切磋琢磨する仲間であっても、リングで対峙するなら「勝負に徹する」という意思表示だった。
「無慈悲」な武居由樹か、「獰猛」な比嘉大吾か
さて、バックボーンの説明から入ってしまったが、武居と比嘉というボクサーそのものが希有な実力を持つ個性派であることが、何よりも試合への興味を駆り立てている。
武居はキックボクシングのK-1で頂点を極め、ボクシング転向後は8連続KO勝利で世界挑戦にこぎつけた。今年5月、東京ドームでジェイソン・モロニー(オーストラリア)を下して無敗のまま世界チャンピオンになったのはご存じの通りだ。
身長170センチ、スタンスを広く取るサウスポーで、ロングレンジから叩き込む上下の左と右フックを武器としている。射程が長い、威力抜群の左を顔面に、そしてボディに、ポーカーフェイスで叩き込む姿は「無慈悲」という表現がよく似合う。キック出身ならではのトリッキーな動きも特徴で、見るからにやりにくそうな印象を与える。
一方、比嘉は162センチと背が低く、ガードを固めて距離を詰め、激しい連打で相手を追い込むスタイルだ。フライ級時代は圧倒的な馬力と回転力で対戦相手をなぎ倒し続けた。チャンスとみるや一瞬の躊躇もなく襲いかかる姿は「獰猛」の2文字がもっともふさわしい。
WBCフライ級王座の3度目の防衛戦で日本人選手初の世界戦計量失格、王座はく奪のどん底に突き落とされたのが2018年4月のこと。バンタム級にクラスを上げて復帰後は、なかなかエンジンがかからない印象だったが、ようやくここにきて2試合連続KO勝ちをマークして復調を感じさせた。
「大吾にはクセがある」発言は牽制か、あるいは…
それぞれの特徴から、両者の見立ては「カギは距離。離れていると武居くんの倒しっぷりが出ると思うし、自分がどれだけ入って距離をつぶせるかだと思う」(比嘉)、「(ポイントは)距離ですね。自分の距離で強いパンチを当てて倒したい」(武居)とおおむね一致する。
展開を問われた野木トレーナーはひときわ声を高めた。