プロレス写真記者の眼BACK NUMBER

83歳で電流爆破のリングに…ドリー・ファンク・ジュニアが叫んだ“信念”とは?「まだ、死ねない」ステージ4のがんと闘う愛弟子へのメッセージ 

text by

原悦生

原悦生Essei Hara

PROFILE

photograph byEssei Hara

posted2024/08/31 17:00

83歳で電流爆破のリングに…ドリー・ファンク・ジュニアが叫んだ“信念”とは?「まだ、死ねない」ステージ4のがんと闘う愛弟子へのメッセージ<Number Web> photograph by Essei Hara

ドリー・ファンク・ジュニアの背中に電流爆破バットを振る大仁田厚。8月24日、富士通スタジアム川崎

83歳のドリーが叫んだ「Never Quit!」の意味

 試合から数日経って西村に会った。西村は元気に見えた。

 1998年に最初のがんを患った時、西村は手術後、自然の力を信じて独自のスタイルでがんに打ち勝つことができた。だが、ステージ4での発見で全身に散らばってしまった今回のがんの治療は厄介で過酷だ。でも、西村はただ、死を待つようなことはしない。

 今回は化学療法や放射線治療も取り入れた。「生きる」という強い意志を持ってこれに立ち向かっている。

 化学療法がズバリ当たった例も筆者は知っている。西村に素晴らしい奇跡が起きることを祈っている。

 ドリーが試合のリングに上がるのは、さすがにこれが最後になるだろう。だが、日本が好きなドリーは「また来たいね」と言った。

 ドリーはリング上でマイクを握り、観客に叫んだ。

「Never Quit! Forever!」

 ネバー・クイット(決して辞めない、逃げない、あきらめない……)。それはもちろんファンへのメッセージであったが、同時に西村へのメッセージのようでもあり、ドリー自身への強いメッセージでもあったように思えた。

「私はレスリングファンが求めるものは何でも応えたいと思っている」

 ドリーはプロフェッショナル・レスラーとして、まだ、その旅の途中なのかもしれない。

 電流爆破の余韻が残る川崎で、83歳のドリーが「Never Quit!」を繰り返していた。

関連記事

BACK 1 2 3
ドリー・ファンク・ジュニア
西村修
大仁田厚
テリー・ファンク
アントニオ猪木
ジャイアント馬場

プロレスの前後の記事

ページトップ