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センバツ準優勝・報徳学園がまさかの初戦敗退…エース・今朝丸裕喜に起きた“ある異変”「部員は全員県内出身」の公立校が優勝候補を撃破のワケ 

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田口元義

田口元義Genki Taguchi

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posted2024/08/12 11:00

センバツ準優勝・報徳学園がまさかの初戦敗退…エース・今朝丸裕喜に起きた“ある異変”「部員は全員県内出身」の公立校が優勝候補を撃破のワケ<Number Web> photograph by JIJI PRESS

プロ注目の報徳学園・今朝丸裕喜からタイムリーを放った島根・大社の下条心之介。大舞台でジャイアントキリングを決めてみせた

 2アウトから連打を許し一、二塁とピンチを広げ、園山純正の打席。初球のフォークで空振りを奪った徳田が、もう1球、同じ球種のサインを送る。これに今朝丸が首を振り、徳田がストレートに切り替えると頷いた。

 徳田はこの決断について、再び「油断」と唇を嚙みしめる。

「低めの変化球も対応されていただけに、『今朝丸のストレートなら抑えられるだろう』と思ったんですけど。今さらですけど、意志を貫けばよかったです」

 2球目。外角へのストレートをレフト前に弾き返され、痛恨の3点目を与えてしまった。ここでバッテリーは、ようやく大社打線のバッティングには根拠があるのだと悟った。

 今朝丸が悔しさを滲ませる。

「調子自体はよかったので、最初は投げていて『当ててこられている』っていう嫌な感じはなかったんですけど、7回の3点目でそれを感じました。ピッチャーとして一番やってはいけない失点だったと思います」

 9回。三塁側アルプススタンドからの伝統応援『アゲアゲホイホイ』と打線が共鳴し、1点を返す。これまで数々の劇的な試合を演じたことで「逆転の報徳」と呼ばれるチームの大合唱は、ベンチから勝利を願っていた今朝丸も「すごい」と唸るほどだった。

 だが、試合は1-3で終幕を迎えた。

甲子園は何が起きても不思議ではない

 監督の大角は「2回からは立ち直ってくれただけに、攻撃でもっと援護できていれば。彼には申し訳ないことをした」と、頭を下げながらエースをねぎらっていた。

 かたや今朝丸はというと、どこかすっきりした表情で試合後の取材に応じていた。

 開口一番「悔しい気持ち」と感情をストレートに伝えながら淡々と質問に答え、充実感をほのめかすように夏を締めた。

「去年は出られなかった夏の甲子園を目標にしてきて出ることができたので、最後は笑って終わろうと思っていました」

 報徳学園と今朝丸が教えてくれたこと。

 それは「やはり甲子園は何が起きても不思議ではない」ということだった。

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