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センバツ準優勝・報徳学園がまさかの初戦敗退…エース・今朝丸裕喜に起きた“ある異変”「部員は全員県内出身」の公立校が優勝候補を撃破のワケ
posted2024/08/12 11:00
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph by
JIJI PRESS
この夏、甲子園で次々とジャイアントキリングが起こっている。
大会2日目。全国の舞台でまだ勝利がなかった小松大谷が、3季連続で甲子園に出場中の明豊を8-4で寄り切った。大会3日目。初出場の新潟産大附が、2017年夏の覇者である花咲徳栄に2-1で勝利し、初陣を金星で飾った。
そして、大会5日目の8月11日。
多くのものが予想だにできなかった「まさか」が起こった。2年連続でセンバツ準優勝。夏の甲子園でも優勝候補の一角に挙げられていた報徳学園が、32年ぶりの出場となった島根の公立校である大社に1-3で敗れたのである。
さらに報徳学園の不覚には、もうひとつの「まさか」も含まれていた。
ストレートの最速151キロを誇る「プロ注目」右腕の今朝丸裕喜が、3失点ながらも7回途中でノックアウト。世代を牽引する存在の陥落は衝撃でもあった。
「結果がこうだと、言われてしまうのは仕方がないことだと思いますが」
監督の大角健二は、言い訳を封じた上で今朝丸を擁護するように言った。
「試合前のブルペンで投げ終わったときも『調子いいです』と言っていましたし、それ以前の会話や表情なんかを見ていても、いつもと変わらないようには映っていました」
注目されることについて、今朝丸本人も「プレッシャーを感じることなく、平常心で投げられました」と話していた。
エースに起きていた小さな「異変」
そのなかで、ちょっとした“異変”に気づいていたのが、このエースとバッテリーを組んできたキャッチャーの徳田拓朗である。
「ブルペンでちょっとボールが上ずっていたんです。でも、球威はあったので『これなら抑えられるだろう』と思っていたんですけど」
徳田はブルペンでの判断について、「油断」だと自らを断罪した。
1回。大社のトップバッターである藤原佑にライト前へ運ばれる。二塁を狙ったバッターランナーをセカンドで刺し事なきを得たが、続く藤江龍之介のサード強襲ヒットから、フォアボールとゲッツー崩れで2アウト一、三塁とピンチを広げてしまう。ここで5番の下条心之介に、内角低めのストレートをレフト前にはじき返され、さらにこの間に守備の乱れも出てしまい、立ち上がりに2点を失った。