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体操金メダル・岡慎之助に“敗れた中国エース”が語った称賛の言葉「互いに学び合える、良いライバル」“日本の20歳”はこうして世界を驚かせた
posted2024/08/01 17:12
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph by
Getty Images
才能を覚醒させた20歳が初出場のパリ五輪で頂点に立った。体操男子個人総合で岡慎之助(徳洲会体操クラブ)が86.832点で金メダルに輝いた。
団体総合に続く2つ目の金メダルに、「目標にしていた団体と個人の金メダルをまず達成できてうれしいです」と笑顔を見せた。
22年に右膝前十字靱帯を断裂する大けがを負い、そこから復帰しての世界一。「きついトレーニングもあったけど、パリという目標が自分の中に軸としてあった。ケガを乗り越えてきて本当に良かったです」と喜びを語った。
息詰まる熱戦だった。予選1位は2021年世界選手権金メダリストの張博恒(中国)、2位が岡、3位が22、23年世界選手権金メダリストで東京五輪チャンピオンの橋本大輝(セントラルスポーツ)、4位が17年世界選手権金メダリストの肖若騰(中国)。3人のチャンピオン経験者とともに、初出場の岡は最初から最後まで堂々と演技を続け、そして勝った。
“最後まで分からなかった”金メダル争い
1種目目のゆかはしなやかな動きで着地をほとんど決めて14.566点。5位で好スタートを切った。2種目目のあん馬では体の柔軟性を活かし、ゆったりとした美しい旋回を見せて14.500の高得点。
張がゆかで着地の際に前に崩れて頭をついてしまい、橋本もあん馬で落下と、日中両エースが大きく出遅れる中、安定した演技を見せた岡が2種目を終えてトップに立った。
3種目目のつり輪を13.866点とまとめて首位をキープすると、4種目目の跳馬は膝の負傷の影響でライバル勢より難度の低い技を選んでいるため得点は抑えられ、一時3位に後退。
しかし、5種目目の平行棒が岡を再びトップへ押し上げる。岡は最も得意とするこの種目で15.100点を出して5種目の合計72.332点。2位の肖に0.334点差、3位まで上げてきた張には0.366点差をつけて最終種目の鉄棒を迎えることとなった。
上位3人の鉄棒のDスコアは岡が5.9、肖が5.8、張が6.5。技の出来映えがメダルの色を分けるという緊迫した空気の中、3人の中で先に演技をした肖が会心の演技で14.366を叩き出してプレッシャーを与える。
だが、20歳の新鋭は重圧に打ち勝った。コールマンなどをきっちり決め、14.500点の高得点を出して合計86.832点。最終演技者である張にも逆転のチャンスはあったが、車輪でやや停滞した箇所があり、14.633。合計86.599点となり、岡が0.233点上回って金メダルが決まった。