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体操金メダル・岡慎之助に“敗れた中国エース”が語った称賛の言葉「互いに学び合える、良いライバル」“日本の20歳”はこうして世界を驚かせた
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph byGetty Images
posted2024/08/01 17:12
体操男子個人総合で金メダルに輝いた岡慎之助(20歳)と銀メダルの張博恒(右)と銅メダル・肖若騰
「岡はハイスペックを搭載したフェラーリだ」
岡山県で生まれ、体操の道一本に懸けてこれまでの人生を歩んできた。
「慎之助」の名の由来はプロ野球・巨人の阿部慎之助。父に「阿部選手のようなスーパースターになれ」と名付けられた少年は、高校生になるタイミングで神奈川県鎌倉市の社会人チームの徳洲会に練習の拠点を移し、年齢の離れた選手たちの間で鍛錬を積んで来た。
徳洲会の米田功監督が「岡はすべてにハイスペックを搭載したフェラーリだ」と例えるように、その才能はジュニア時代から高く評価されてきた。
徳洲会入りして間もない2019年6月にハンガリーで行われた世界ジュニア選手権で個人総合優勝。当時の身長はまだ140センチ以下でおとなしい性格でもあったが、モヒカン刈りの奇抜なヘアスタイルでも存在感をアピールしていた。
あだ名は「ちん」、モヒカン好きの天然キャラ
天然キャラでもある。今回の個人総合のメダリスト会見で現在のウエーブのかかった髪型について「こだわりはありますか?」と聞かれると「お気に入りの髪型は、世界ジュニアの時のモヒカンです」と答えた。唐突とも言える質問に対してたじろぐことなく「モヒカン好き」をアピールした。
代表チームでは「しんちゃん」と呼ばれているが、徳洲会でのあだ名は「ちん」。本人いわく「『しんのすけ』がなぜか『ちん』になりました」と屈託がない。
今回のパリ五輪では、選手村の居室で水漏れが発生し、岡が寝ていた段ボールベッドが吸収。最初は我慢して使っていたが、水で濡れたダンボールは日に日にしなりがひどくなり、腰痛を招きかねないとして交換したエピソードを明かしていた。はにかんだ笑顔がトレードマークでもある。
年上の選手たちから可愛がられる20歳。だが、試合では一変した。少しの隙も見せない演技で世界の頂点に立った。