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堀米雄斗「大逆転劇」の裏側で…154cmの世界ランク1位が“まさかの予選落ち” 小野寺吟雲(14歳)「敗北の真相」とそれでも感じた「無限の可能性」
text by
吉田佳央Yoshio Yoshida
photograph byAsami Enomoto/JMPA
posted2024/08/02 11:02
世界ランク1位で臨んだパリ五輪でまさかの予選落ちに終わった14歳の小野寺吟雲。それでも随所にその可能性を感じさせてくれた
ランで高得点を獲得するにはミスをしないことが大前提ではある。しかし、それだけでなく、バリエーション豊かにトリックを構成する必要もあるのだ。同じトリックばかりでは点数が伸びない。それは本人もわかっていたはずだが、同じトリックで構成せざるを得ないほど心身が追い込まれていたのだろう。
だが、彼はまだわずか14歳の少年。しかも男子ストリートにおける出場者全員の平均年齢は26.1歳と一回り上。明らかに体格で勝る大人しかいない中、世界中の注目を浴びて戦わなければいけない。そのプレッシャーは想像を絶するものではなかったかと思う。
聞けば彼は昨年末に有明コロシアムで開催された世界選手権後も風邪を引いて寝込んでいたという。それだけ毎回全身全霊をかけて戦っていたということなのだろう。多少の体調不良は無理もない。
意識朦朧でも…トリックを成功させた精神力
敗退後のインタビューでは「熱中症であまり覚えていない」と話していた小野寺。
だがそう考えると、自分は暑さで意識が朦朧としそうな中フルメイクのランを見せ、しかもベストトリックでは「フロントサイドブラントスライド・バリアルキックフリップアウト」まで成功させてしまったことの方に驚いてしまう。いくら体調を崩してしまったとはいえ、並大抵の精神力ではないことは明らかだ。
よく「オリンピックには魔物がいる」と言われるが、まさか小野寺までもがその餌食になるとは……。これが率直な感想なのだが、今回の経験は彼をさらに強くしてくれると、自分は確信している。
もしかしたら4年後は、世界でも小野寺に勝てる選手はいなくなっているかもしれない。そうなっていても、彼なら全くおかしくないだろう。