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「見栄えなんて関係ない」人気女子レスラー・安納サオリが見せた“底知れないタフさ”…岩田美香戦前、母親に告げられた「勝つまで帰ってくるな」 

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橋本宗洋

橋本宗洋Norihiro Hashimoto

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posted2024/07/27 11:00

「見栄えなんて関係ない」人気女子レスラー・安納サオリが見せた“底知れないタフさ”…岩田美香戦前、母親に告げられた「勝つまで帰ってくるな」<Number Web> photograph by Norihiro Hashimoto

岩田美香との2冠戦に勝利し王座に返り咲いた安納サオリ

母からの連絡「勝つまでは帰ってくるな」

 猛暑の中で7月12日、13日がスターダム大阪大会。14日は関西ツアーの最後に滋賀・米原で試合をした。そこから東京に移動してダブルヘッダーでOZアカデミー新宿大会。翌日昼が仙女での岩田戦である。

「5連戦はキャリアの中でも初めてで。さすがに疲れなかったといったら嘘になりますね。でも不思議と調子はよかったんです」

 14日に試合をした滋賀は、安納の出身県だ。滋賀の空気を吸うだけでもリフレッシュできるという。ただ実家には帰らなかった。いつもは時間があればすぐ帰省しているのだが。

「実は母親から連絡がありまして。“岩田美香に勝つまでは帰ってくるな。試合に集中して”と。私は実家に帰ると一気に“オフ”になってしまうので。母はよく分かってますね、私のこと」

 もっと注目されたい、もっと世間に自分を届けたい。女優志望だったこともあり、安納は“見られる”ことがパワーになるタイプだ。忙しさは「スターになったみたい(笑)」という充実感につながる。

 そういう意味でも安納らしい勝利だった。そしてこれから、安納はさらに忙しくなる。なにしろ2冠王なのだ。7月27日には札幌大会でなつぽいと白いベルトの防衛戦。ファン待望のカードだけに東京のビッグマッチで見たかったというファンも多いだろう。

安納vs.なつぽいは“世間との架け橋”に?

 ただ安納vs.なつぽいは、これまでスターダムを見たことがない層にも“届く”力がある。いつもの東京でのビッグマッチではなく、あえて札幌で闘うことにも意味がありそうだ。安納はスターダムのチャンピオンとして、常に「世間との架け橋になりたい」と言ってきた。

「私たちをパッと見てプロレスラーだと思う人はいないんじゃないかなと。そういう私たちだから、普段プロレス、女子プロレスを見ない人たちのきっかけになれたらと思います」

 8月10日からは、毎年恒例のシングルリーグ戦「5★STAR GP」がスタートする。仙女のタイトルの初防衛戦も決まった。8月24日の仙台大会、挑戦者は仙女の顔の1人、DASH・チサコだ。

「チャンピオンとして、スケジュールが許す限り仙女にも出たい」

 岩田戦の直後に安納は言った。岩田との闘いも「間違いなく、これが最後じゃない」。

 岩田との関係性、ストーリーがあって「私だから巻くことができた2冠」だと安納は考えている。多忙でハードな夏は、彼女のキャリアが他の誰とも違うものであることを示していると言っていい。人には真似のできない、誇らしいキャリアだ。

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