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「彼はあまり疲れないタイプだから」藤井聡太の師匠・杉本昌隆が口にしていた“ある予言”…渡辺明の戦略ズバリ“灼熱の名古屋決戦”のウラ側

posted2024/07/12 11:04

 
「彼はあまり疲れないタイプだから」藤井聡太の師匠・杉本昌隆が口にしていた“ある予言”…渡辺明の戦略ズバリ“灼熱の名古屋決戦”のウラ側<Number Web> photograph by Number Web

2日目の午後に千日手指し直しとなった王位戦第1局。同日の名古屋市は37度を超える猛暑日だったが、盤上もすさまじい熱気に包まれていた

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いしかわごう

いしかわごうGo Ishikawa

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7月6日から7日にかけて愛知県・徳川園で行われた将棋の第65期王位戦第1局。藤井聡太王位(七冠)と挑戦者の渡辺明九段による対局は、千日手指し直しの末、想像をはるかに超える激闘となり……。“灼熱の名古屋決戦”を現地取材した記者が観戦記を寄せた。(全3回の2回目/#1#3へ)

「藤井王位がちょっと不利」師匠・杉本昌隆八段の見立て

 この日、愛知県名古屋市の最高気温は37.7度に達していた。

 指し直しが始まり、夕暮れ時になっても気温は35度を超えたままである。暑さはまるで和らぐ気配がなかった。

 指し直し局は「渡辺有利」だと言われていた。

 一般的に勝率が高いとされる先手番の権利が渡辺明九段に移ったことも一因だが、藤井聡太王位よりも持ち時間を多く持ってスタートできることも、大きな理由である。具体的には藤井の1時間に対して、渡辺は2時間20分。1時間20分のアドバンテージを持って、指し直しに臨めることになっていた。

 対局における持ち時間は、スタミナのようなものだ。

 勝負所で持ち時間が多く残っていれば、惜しみなく時間を注いで局面に没頭できる。しかし持ち時間が短ければ、それは難しくなる。読みの精度は落ち、焦りも生まれやすくなるだろう。しかも2日制の対局ともなれば、終盤は心身の疲労もピークに達し、錯覚を起こしやすくなる。持ち時間を使い切ってからの秒読みで起きた逆転劇は、枚挙にいとまがない。

「藤井王位だけ消耗しているんですよ」

 藤井の師匠である杉本昌隆八段は、指し直しが始まる際に大盤解説会でそう切り出している。地元・名古屋での対局ということもあり、両者の持ち時間の差については、中日ドラゴンズの喩えを使って、こう客席に説明してくれた。

「野球で言えば、藤井王位は先発ピッチャーが5回まで0点で抑えて、いまは中継ぎや抑えの藤嶋(健人)投手やマルティネス投手が投げて、0点で抑えている状態です。渡辺さんの方は先発ピッチャーがずっと1人で抑えている。藤井王位が消耗している分、ちょっと不利に見えると思います」

【次ページ】 地元で感じた藤井聡太の人気「師匠もよくテレビで…」

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