酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
「キャンプで僕が業務用トラックを」四国各県バス遠征、帰宅は深夜1時…なぜ慶応高校前監督は“独立L球団代表”になったか「今の使命です」
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byKou Hiroo
posted2024/07/13 11:02
慶応義塾高校の前監督で、独立リーグ香川で奮闘する上田誠氏
「当初は、じいさんが出ていくような状況じゃないし、現場を見るのは嫌だと言ったんです。春季キャンプに行ったらトレーナーもマネージャーもいない。僕が業務用のトラックを運転するような状態でした」
当初は2カ月くらい見て、後任を誰かに任せようと思っていたそうだ。しかし純真な選手が多く、上田にこう聞いてくる選手もいた。
「慶応ではどんな練習しているんですか?」
守備のフォーメーションなどを教えると「知りませんでした」といった感じで――いつの間にかヘッドコーチ、となったという。
家内は来てないです、冗談じゃないって(笑)
「球団代表であり、ヘッドコーチ、マネージャー、それに用務員さんみたいな感じですね(笑)。その後、慶応高、慶応義塾大学の教え子で、鎌倉学園中で監督をしていた澤村俊輔君と、同じく慶応高、慶応義塾大の教え子で、トヨタでプレーした沓掛祥和君がコーチに就任しました」
自宅も神奈川県から香川県高松市に移した。就任決定後、アイランドリーグ事務局や、スポンサーへの挨拶の際に「週1回ほど来ています」レベルでは信用してくれない、との周囲の助言を受けてアパートを借りたが、べったりと住んでいるそうだ。
「家内は来ていないです。冗談じゃないって(笑)。だから炊飯器を買いましたよ、料理も自分で作っています。香川の人は、最初は誰だこいつ、みたいな感じでしたが、現地に住んで交流するうちにいろいろ話し合えるようになりました」
チームとしては「目につく選手も何人かいます」というレベルである一方で、四国アイランドリーグPlus全体については「徳島インディゴソックスには150km/hを普通に出す投手がたくさんいて、愛媛や高知にも1~2人は“これは”という投手がいる。毎年ドラフトでかかるのは当たり前だな、と思いましたね」と、投手のレベルには驚いているという。
彼らの野球はまだ大雑把なんです
そんな中で、香川はどういうチーム作りを考えているのか?