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巨人の開幕投手にノーヒットノーランも…戸郷翔征が進化する秘密は“メジャー流”の仕上げ過ぎないキャンプにあり?「投げ込みは100球を超えない」
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byHideki Sugiyama
posted2024/07/04 17:37
巨人の開幕投手を務め、5月にはノーヒットノーランも達成。ここまで6勝をあげ防御率1.98と好調を維持する戸郷翔征。その進化の秘密とは?
例年の戸郷はキャンプで、100球を超える投げ込みを2回ほど行ってきていた。ところが今年のキャンプでは2月8日に65球を投げただけで、100球を超える投げ込みは1回も行っていない。いや……行えなかったのである。
「ちょっとコンディションの問題で投げ込みをできなかった。でも、言われてみればそれが良かったのかもしれないと僕も思います」
戸郷はこう振り返る。
投げ込みができなかった理由は、決して故障ではない。しかしキャンプに入っても体調がなかなか上がってこずに、練習で出力を上げることができなかった。いわゆるコンディション不良とでも言えばいいのか……。それでも戸郷の選択はムリをして投げ込みを行うのではなく、我慢してじっくり体作りや感覚を磨くことに専念することだった。
100球以上の投げ込みをせず、開幕投手に
そうして2月から開幕に向けての準備をしてきたのである。
結果的にはオープン戦でも3月14日のソフトバンク戦で5回86球を投げたのが最多で、ついに100球以上の投げ込みは1回も行わずに開幕を迎えている。
「だから開幕を迎えるに当たって、やっぱり自分の中ではどうなのかなあという気持ちがあったのは確かです」
戸郷自身の中では初めて経験する開幕投手の重責もあり、不安がなかったと言えばウソになるかもしれない。
それでも3月29日の東京ドームでフタを開ければ、阪神打線を相手に6回100球を投げて、4安打無失点の内容で白星スタート。その後も状態は日を追うごとにむしろ尻上がりとなり、投球内容も良くなっていった。
「いつものシーズンも100%で入っていくということはないですけど、今年は6割とか7割でした。そこからだんだん状態が上がっていく感じ。それがハマったというのはあるかもしれません」
戸郷の分析だった。
メジャーの一般的な調整法
実は開幕にトップギアではなく、ある意味、調整の途中段階くらいでシーズンをスタートする。そこから試合をこなしていく中で徐々に上げていくというのは、メジャーでは一般的な調整法である。