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「もう十分だよ」渡邊雄太から“NBA卒業”を告げられた瞬間、涙腺が決壊した…現地記者が絞り出した感謝の言葉「6年もサバイブしたのは勲章」
text by
杉浦大介Daisuke Sugiura
photograph byNaoki Nishimura/AFLO SPORT
posted2024/07/13 17:01
千葉ジェッツとの契約合意を発表した渡邊雄太(29歳)。パリ五輪での活躍も期待される
ラプターズでプレーした2020〜21シーズン(50戦に出場)、ネッツの人気選手になった2022〜23シーズン(58戦に出場)を除けば、NBAでの渡邊はベンチを温める時間の方が遥かに長かった。常に主力かそれに近い立場だった学生時代とは一線を画し、ローテーションの当落線場にいることの悲哀を誰よりも味わってきた選手でもあった。
不運だったなどと言いたいわけではない。攻撃の武器不足やケガゆえに、シーズンをフルに働けなかったのは渡邊自身によるものである。それでも必死に前向きな笑顔を作る姿は尊敬に値し、それゆえに年々向上できたのだろう。ほとんど常に崖っぷちの立場に立たされながら、世界最高峰のリーグで6シーズンもサバイブしたのは見事な勲章だとしか言いようがない。
ただ、それと同時に、立場が安定しない日々の中で、神経を激しくすり減らしていることも容易に想像できた。特にグリズリーズに復帰後、これまでと比べて笑顔が激減しているようにも思えた。だから「メンタルヘルスに問題を抱えていた」という言葉は衝撃的ではあっても、サプライズではなかった。そんな背景があったからこそ、まだ全盛期の力を残した30歳を前に、渡邊が日本のBリーグでプレーするという決断を聞いて筆者はほとんど安堵したのだった。
天才じゃなかった渡邊雄太が残した功績
すべてを振り返って、たとえ出番に恵まれないシーズンが多かったとしても、渡邊のNBAキャリアに大きな価値があったという答えは変わらない。ドラフト外で入団し、新陳代謝の激しいNBAで6シーズンも頑張れる選手はそれほど多くいるわけではない。世界レベルでは必ずしも天才型ではなかった渡邊の奮闘に影響され、これから先、後に続く選手は出てくるだろう。
そういった意味で、渡邊はNBAでの役割をすでに果たしたとも言える。だからこそ、ここでの帰国は適切なタイミングだったのだ。