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「もう十分だよ」渡邊雄太から“NBA卒業”を告げられた瞬間、涙腺が決壊した…現地記者が絞り出した感謝の言葉「6年もサバイブしたのは勲章」
posted2024/07/13 17:01
text by
杉浦大介Daisuke Sugiura
photograph by
Naoki Nishimura/AFLO SPORT
瞬間、こみ上げるものを抑えられなかった。
メンフィス・グリズリーズとブルックリン・ネッツの対戦でブルックリンのバークレイズセンターを訪れた3月4日のこと。試合後、グリズリーズのロッカールームで渡邊雄太に「ダイスケさん、ちょっといいですか?」と呼び止められ、そこで今後のことを告げられたのだ。
「実はNBAでのプレーには今シーズンで区切りをつけて、僕は来季、日本でプレーしようと思っているんです」
まったく想像できない言葉ではなかった。
昨季の渡邊はシーズン途中からフェニックス ・サンズのローテーションから外れ、サンズの一員として1月31日、ブルックリンを訪れた際にも「年齢的にも僕はもうNBAでもそんなに長くはやれないんだろうと思っている。一日一日、楽しまないともったいないと思うようになりました」と少々意味深な言葉を残していた。トレード期限前の2月8日に古巣グリズリーズに移籍が決まっても、不安定な起用法に変化はなかった。
そんな背景もあって、ジョージ・ワシントン大時代から渡邊のプレーを見続けた“ユータ・ウォッチャー”の筆者は“終わりの予感”を実は濃厚に感じていた。サンズがワシントン・ウィザーズと対戦した2月4日。ワシントンDCにまで足を延ばして現場取材したのは、渡邊がカレッジでの日々を過ごした街でもう一度、プレーを観ておきたいという気持ちがあったからだ(後に渡邊にそれを伝えると、「NBAでの僕のプレーを観たのはDCが最後ですか!」と少し嬉しそうに表情を崩していた)。
ただ……それでも実際に言葉にして“終わり”を告げられると、やはり冷静ではいられなかった。これまでのことが走馬灯のように頭をよぎり、涙腺が決壊した。