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ラグビーPRESSBACK NUMBER
「トサ、俺の親父と一緒の歳だな」ラグビー土佐誠が英国で楽しむ“38歳の新入部員”生活「頭の病気、大麻事件、いろんなことがあったけど…」
text by
中矢健太Kenta Nakaya
photograph byKenta Nakaya
posted2024/06/28 11:04
ケンブリッジ大学の経営大学院に通う土佐誠。今日で38歳、今年3月には自身2回目となる伝統のラグビー定期戦「バーシティマッチ」にも出場した
「練習して、試合して、結果出して。結果がダメでも、みんなでご飯食べて話して、次も頑張ろうって。年齢は全く関係なくて、本当に楽しませてもらっています。若い子たちの激しいノリにはもうついていけないですけどね。この前は、19歳のチームメイトに“トサ、俺の親父とほとんど一緒の歳だな。なんなら、俺の親父より先に生まれてるぞ”って言われました。年は離れていますが、みんな僕の面倒をよく見てくれます」
今年3月には、2回目のバーシティマッチ出場を果たした。8番で出場した土佐はフル出場。ゴール前スクラムの持ち出しからトライも決め、勝利に貢献した。前回、オックスフォードで出たのは15年前。
互いを“The other place”(あちら側)と呼ぶライバル関係にある両校がゆえに、当時の旧友たちには少しだけ咎められた。表彰式では、土佐の姿が見当たらなかった。プレッシャーから解放され、記念カップを片手にはしゃぐチームメイトたちの後ろに隠れていた。旧友たちへの敬意だった。正式な記録には残っていないが、過去にオックスブリッジ双方でブルーを得たのは、153年の歴史で土佐が6人目だと言われている。
37歳でこの世を去った名ロックの想い
今回の留学にあたって、土佐はケンブリッジのラグビー部から「ダン・ヴィッカーマン・スカラシップ」という奨学金を受けている。
ヴィッガーマン氏は、オーストラリア代表として63キャップを持ち、2度ワールドカップに出場した名ロック。土佐がオックスフォード生だった時には、ケンブリッジのキャプテンとして対戦していた。そんなヴィッカーマン氏は、37歳の若さでこの世を去った。家族やラグビー部が中心となって設立された奨学金である。
「昔の対戦相手の名前を冠した奨学金をもらって、違う方でプレーする。なかなかない経験というか、不思議な縁というか。名選手でしたし、彼の名に恥じないように、いい影響をラグビー部に与えられるように頑張っています」