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関東学院大ラグビー大麻事件で活動自粛、意識失い脳てんかん闘病→開頭手術「なんで俺だけ…」波乱万丈すぎるラグビー人生・土佐誠38歳は今 

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中矢健太

中矢健太Kenta Nakaya

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photograph byKiichi Matsumoto

posted2024/06/28 11:03

関東学院大ラグビー大麻事件で活動自粛、意識失い脳てんかん闘病→開頭手術「なんで俺だけ…」波乱万丈すぎるラグビー人生・土佐誠38歳は今<Number Web> photograph by Kiichi Matsumoto

本日6月28日に38歳になった土佐誠。波乱万丈のキャリアを歩んだ男はいま、イギリスにいる(写真=2019年撮影)

 寮でシャワーを浴びていたときに突然意識を失った。気づいたときには病院のベッドの上だった。診断は「側頭葉癲癇(てんかん)」。発作が起きると意識を失う慢性疾患で、土佐の場合は休んでいるときに発作が起きることが多かった。

 なんでまた俺だけ――。言葉にならないほどショックで、自らを恨んだ。トレーニングや食事、車の運転。今までできていた「普通」の一つ一つが、自分からいなくなるように離れていった。

「できていたことを諦めきる辛さっていうのは、その時に初めて感じました。もっとやれるのに、やれない。それでも、チームにいさせてくれたNECには本当に感謝しています。そのあたりから、引退したときのことを考え始めました」

開頭手術、発覚から3年で復帰

 NECのロッカールームで隣だったのが、元ウェールズ代表のガレス・デルヴという選手だった。彼が別のチームで主将をしていた頃、同じ状況から手術で復帰したジュリアン・ハクスリーという選手がいたことを教えてもらった。繋いでもらい、彼の経験談とアドバイスを受けた。

 2014年、土佐は開頭手術に踏み切った。術後の経過を見ながら、リハビリを開始。しばらくして運動が許可されても、低いタックルへの恐怖心は消えなかった。時間をかけて少しずつ、怖さを取り除いた。そして、発覚から3年が経った30歳で復帰。開頭手術から復帰するのは、ラグビーなどコンタクトスポーツでは日本で初めてのケースだと担当医から告げられた。

「それまで自分の近い周りしか見えてなかったんです。セミプロだったので、職場の方のため、社員として働いているこのチームのために勝とう。社会に与える影響なんて考えたこともなかった。でも病気になって、同じような状況の人を結構探したんです。別の同じ状況の人も、きっと誰か探すんだろうなって。そうやって探したときに、土佐誠っていう人が元気に復活しましたって見つけたら、勇気付けられるかもしれないなと思ったんです」

【次ページ】 見据えた未来の先「MBAを取りたい」

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