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箱根駅伝出場の元監督が異例の「選手」復帰…上野裕一郎38歳が佐賀で目指す「恩返し」「瀬古(利彦)さんと両角(速)先生が心配してくださって…」
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byTakuya Sugiyama
posted2024/06/29 06:02
選手専念の形では5年ぶりに競技復帰を果たした上野裕一郎。所属のひらまつ病院(佐賀県小城市)での競技生活について話を聞いた
「僕は、あくまでも選手ですけど、そういう形でもチームに関わることができて、すごくうれしいです。今は僕が考えたメニューを監督に説明し、それをスタッフ全員で共有して練習に取り組むようになっています。まだ、力のない子がいるので、『そういう子たちを頼んだぞ』と理事長に言われていますし、こんな状況で採っていただいて、大きな役割まで与えてくださったので、少しでも恩返しをしたいんです」
半年ほどで「九州の日本人トップ」に
練習の成果か、上野の体は見る限り、だいぶ絞られている感がある。2018年12月に監督に就任してからは、筋トレなど一度もしなかったが、現役復帰の際、筋力をつけるために筋トレを始めた。体幹の強さも戻ってきて、体重も66.5キロから63キロまで落ちた。監督時代に走っていたタイムで今は楽に走れるようになった。
「2月に個人合宿をやって、感覚的に良くなったと思えたのは、3月中旬です。走りのベースとなる部分、クロカンや距離走、ロングジョグを休みながら継続していくことでベースが上がってきて、ポイント練習でもスピードに乗るようになったんです。ここまで上げて来られたのはひらまつ病院のために走力を戻して結果を出す、日本選手権に出るというモチベーションがあったからで、そういう目標がないとダメだなって改めて思いました」
4月、兵庫リレーカーニバルの10000mでは最初、2分52秒のペースで走り、2分40秒まで上げた。このままのペースでいけば28分35秒切りも可能だったが、後半に力んでしまい、それでも28分42秒38で日本人2位となった。5月19日、九州実業団陸上選手権の男子5000mでは13分54秒77で日本人トップの2位に入った。
「このレースは勝つつもりとか、日本人トップとかぜんぜん考えていなかったんです。チームの選手たちを引っ張って、そこから先頭が見えたら追おうかなと思ったんですが、けっこう暑くて風も強く、みんな崩れてきたんです。僕は楽だったので前に行ったんですが、ケニア人選手に届かなくて。トレーニングの一環として出場したのですが、思いがけず順位もついてきてよかったと思いました」
選手時代と違う一面
このレースを練習の一環と言えるところに、以前とは異なる上野が見えた。