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将棋PRESSBACK NUMBER
「いやいやいや…」藤井聡太“まさかの一手”に控室が騒然、解説者は絶句…伊藤匠が迫り、八冠に起きた異変 藤井聡太「初失冠の1日」
text by
茂野聡士Satoshi Shigeno
photograph byKeiji Ishikawa
posted2024/06/22 17:02
伊藤匠との叡王戦第5局、途中まで評価値では勝利へと到達する「藤井曲線」を描いていた藤井聡太だが、後手の伊藤が食い下がり終盤へと突入すると…
松尾八段が繰り返した言葉に、緊迫した会場からようやく笑い声がこぼれた。しかしそこから数分して、藤井が固めた先手玉に対して、伊藤がじわじわと迫りつつあった。
「後手が面白くなっているようにも、見えますね」
記者控室に戻っても、一手ごとに「いやあ」「ううむ……」と、持ち時間が徐々に少なくなっていく中で、紙面の締め切りに間に合うかどうかの電話打ち合わせなどとともに、うめき声が広がる。
17時17分 「6四桂」で形勢が大きく動く
叡王戦の持ち時間は八大タイトル戦の中で最も短い各4時間ごとで、「3分58秒」「12分11秒」といった感じで秒単位で記録されるチェスクロック方式が採用されている。持ち時間を互いに消費し、藤井が先に計4時間を使い切り、伊藤も「1分将棋」の入口に立とうとしていた。
そんな終盤も終盤、評価値が示す形勢が大きく動いたのは17時17分のことだった。
131手目、藤井が「6四桂」と打った一手だった。ABEMA解説を務める2人の棋士が指し手を告げたのみで言葉を継げないでいると、伊藤に評価値が大きく動く。それは「将棋連盟Live」の評価値に目をやっても同じだった。
「いやいやいや……ついに……」
両者は1分将棋へと突入
藤井のタイトル連続獲得記録「22」がストップ、そして初失冠、すなわち八冠独占が崩れる瞬間が訪れるのか。
記者控室のどよめきが大きくなる中で――映像の藤井は右拳で膝を叩きつつ、ため息が漏れる。伊藤はそれを察知しつつ盤上を見つめる。これまでになかった構図と緊迫した場面が画面に映し出される。両者は1分将棋へと突入した。
<つづく>