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パリ五輪会場・セーヌ川が「道頓堀より6倍以上汚い」衝撃データ…100年も「泳げない川」で本当に開催できるのか?「最後は天気次第」という不都合な真実
text by
広岡裕児Yuji Hirooka
photograph byGetty Images
posted2024/06/06 06:00
一度雨が降ると一気に写真の通りの水質になるセーヌ川。ここでパリ五輪のトライアスロン、オープンウォータースイミングが行われるというが…
昨年7月9日には、ラバダン副市長などがセーヌに飛び込んでデモンストレーションしたが、その1カ月後、8月5日と6日のテスト大会を兼ねたオープンウォータースイミングのワールドカップは、水質不良のため中止されてしまった。17日から20日のトライアスロンのテスト大会のスイムも前半2日は実施できたが、後半2日は中止された。
これは、汚染がかつてのような工業排水によるものではなく、生活排水によって起きていることを意味している。
雨が降ると“汚染”はセーヌ川に流れ込む
パリ・エスト・クレテイユ大学のフランソワーズ・ルーカス教授(微生物生態学)は、「雨が降るとすぐにかなり劣化する。一般的に雨が降ると、汚染は24時間以内にセーヌ川に流れ込む。晴天なら水質はかなり良くなる。紫外線もバクテリアを破壊する。天気が良くて暑ければ問題はないだろう」と説明している。(『ル・パリジャン』Web 2024年4月16日)
19世紀末につくられたパリ市の下水道システムは汚水と雨水が同じ管に入る「合流式」である。通常、汚水は郊外の汚水処理場に流されて処理される。だが、大雨になると街の通りから雨水が流入して満杯になるため、洪水にならないように、ポンプを使ってセーヌ川に放出されるのである。
市長は「泳ぐ」されど浄化は進まず?
パリの市長は伝統的にセーヌ川で泳ぐことへの執着があるようで、ジャック・シラクも1990年にはみんなの前でセーヌ川を泳ぐと公約した。しかし実現せず、そのうちに大統領になった。
だが、今回の浄化事業は本気で、大会終了後も、2025年夏から一般市民向けの3つの遊泳場をオープンしようとしている。
「セーヌで泳げるようにするのに必要なことはやったのだから。これは本当にすごいレガシーになる」とイダルゴ市長は言う。