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「井上尚弥のベストバウト」大橋会長が選んだ1位はどの試合? いま明かす激闘のウラ側「ナルバエス戦は無謀と言われた」「一番警戒した相手は…」
text by
渋谷淳Jun Shibuya
photograph byKiichi Matsumoto
posted2024/06/01 17:00
井上尚弥に“モンスター”というニックネームを授けた大橋秀行会長。怪物の成長を見つめてきた会長が選ぶ「井上尚弥のベストバウト」とは?
大橋会長が明かすネリ戦秘話「練習の段階から…」
2位のルイス・ネリ戦は5月6日、東京ドームで開催され、4万3000人が会場で試合を見守った最新の試合だ。井上が初回にダウンを喫するという信じられないサプライズがありながら、その後は完璧な試合運びで6回TKO勝ち。エピソード満載の大一番で、大橋会長が取り上げたのは井上の左フックだった。
「練習の段階で左フックがすごかったんですよ。その威力、迫力は見ていて寒気がするくらいすさまじかった。普段ミットを持ってる太田(光亮トレーナー)に『今までで一番すごくないか?』って聞いたら『ここ数年、5、6試合の中で一番すごいです』って言う。本人に確認したら、ここのところケガもあってフルスイングで打ってなかったのが、今回はフルスイングで打てている、ということでした。あの左フックが当たれば絶対に倒れるなと思っていたら、やっぱり左フックでダウンを取りましたよね。すさまじかったですね」
「周りからは無謀だと言われた」ナルバエスとの戦い
ビッグネームであるノニト・ドネアとのフルラウンドの激闘が3位、リマッチの圧勝が4位というのは順当なところか。5位のオマール・ナルバエス戦は井上にとって最初の“出世試合”。いきなり2階級アップし、WBOスーパーフライ級王座を11度防衛中のナルバエスをわずか2ラウンドで沈めた一戦である。もう10年近く前のエピソードを大橋会長が明かした。
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「周りからは無謀だと言われた試合ですね。あのときは最初、WBAフライ級王者のファン・カルロス・レベコに挑戦するという話が進んでいたんですよ。ところがレベコの試合間隔が短く、ケガをして試合ができなくなったら困る、ということなった。そうしたら向こうのマネジャーが同じアルゼンチンのナルバエスをすすめてきた。私は断ろうと思ったんですけど、本人と真吾トレーナーが『スーパーフライ級のほうが体は動く。絶対に自信があるから、やらせてくれ』と。そこまで言うならと思ってやってみたら、ああいう結果になったんです。あれにも驚きましたね」