オリンピックPRESSBACK NUMBER
「モデル顔負け」195cmの長身、父はフランス人、偏差値70超の進学校出身…異例ずくめの“慶應ボーイ”五輪へ期待の陸上・豊田兼(21)とは何者か?
text by
和田悟志Satoshi Wada
photograph bySatoshi Wada
posted2024/05/24 17:01
複数種目でのパリ五輪出場を目指す慶大4年の豊田兼。規格外のフィジカルも含め、世界の舞台での大躍進も期待される
複数種目での五輪代表を目指す豊田
また、冒頭にも書いた通り豊田は110mハードルでも五輪出場を目指している。
高校までは110mハードルと400mハードルの2種目をこなす選手も一定数いるが、シニアで両立させる選手はなかなかいない。同じハードル種目とはいえ、距離だけでなくハードルの高さも異なり、高いレベルで両立させるのは並大抵のことではない。
豊田は、この種目では五輪の参加標準記録(13秒27)に届いていないが、日本歴代6位となる13秒29をマークしている。
そのタイムを出したのが昨年8月に中国・成都で開催されたワールドユニバーシティゲームズ。この大会で豊田は見事に大学生世界一に輝いた。日本人が五輪や世界選手権を含め世界大会で110mハードルの金メダルを獲得するのは史上初めてのことだった。
そんな国際舞台の実績があっても、五輪出場は決して簡単なことではない。
実は、110mハードルは400mハードル以上に代表選考が熾烈だ。ブダペスト世界選手権5位の泉谷駿介(住友電工)がすでに内定し、残りは2枠しかない。その上、日本記録タイ(13秒04)をもつ村竹ラシッド(JAL)と野本周成(愛媛陸協)が参加標準記録を突破している。
さらに、世界大会常連の高山峻野(ゼンリン)も控える。強豪ひしめくこの種目で豊田が五輪に出場するには、日本選手権で泉谷を除いて2位以内に入り、参加標準記録をも破らなければならないのだ(※参加標準記録の有効期限は6月30日までで、日本選手権が事実上のラストチャンスとなる)。
「今年2月、3月はトッパー(110mH)に絞ってやってきた」と言うように、3月には2レースを走った。
沖縄で臨んだ初戦(3月10日)は13秒89だったが、その約2週間後に記録を狙いにいったオーストラリア・シドニーのレースでは転倒して失格に終わっている。
「海外独特の木のハードルに慣れていなかったのと、タイムを狙いに行って攻めすぎた結果、転んでしまいました」
それだけに、今季の豊田の110mハードルは未知数の部分が大きい。それでも、400mハードルの好調ぶりを見れば、いやが上にも、110mハードルでも期待したくなる。
日本選手権は6月27日に400mハードルの予選、28日に決勝。29日に110mハードルの予選と準決勝、最終日の30日に決勝がある。4日間、走り回る豊田の挑戦に注目したい。