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「天性のアイドル力を持っている」美術学生→新人女子プロレスラーに…中野たむも絶賛する玖麗さやかのポテンシャル「応援したくなるんですよ」
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byEssei Hara
posted2024/05/19 11:01
2023年12月25日にデビューしたスターダムの新人女子レスラー・玖麗さやか
呆然としながら、それでも強気なところを見せたのが印象に残っている。
「でも勝ちは勝ちなので」
中野たむ率いる人気ユニット「コズミック・エンジェルズ」(コズエン)入りをアピールすると、同年デビューですぐ上の先輩であるさくらあやとのコズエン見習い対決を経験。2人揃ってのユニット入りを果たし、今度は新人王座フューチャー・オブ・スターダム挑戦を表明した。自力勝利のない選手がタイトル挑戦。風当たりもあったが「やりたいことがあったら実現させないと気が済まないんです。プロレスラーにもそうやってなったので」と言う。
中野たむの絶賛「天性のアイドル力を持っている」
そんな玖麗のポテンシャルを早くから認めていたのが中野たむだ。「天性のアイドル力を持っている」と玖麗を評する。
「見てると自然に応援したくなるんですよ。それは未熟だから、弱いからというだけじゃない。応援したくなるというのはアイドル的な能力だと思います。でも不思議なんですよ。コズエンはみんな芸能活動を経験してるんですけど、玖麗だけはそうじゃない。“魅せる”にはどうすればいいか、経験値として知ってるわけではないんです。なのに目が離せない。今まで見たことがないタイプですね、玖麗は」
難易度の高い技を使うわけではない。いわゆるプロレスラーらしい、力強い立ち居振る舞いができるわけでもない。でもそこがいい、ということもあるのがプロレスだ。リング上、不安に押し潰されそうな顔をしながら、それでも目に力を込める。ファンの声援を聞いて、腰のあたりで小さく拳を握る。たむの言う“アイドル”とは職業のことではなく、存在のあり方のことなのだ。
プロレスラーらしくはないけれど、プロレスに向いている、ということなのだろう。玖麗を見ているとそう思う。本人もレスラーとしての手応えを掴んでいる。
「ちょっとずつですけど成長できてるのかなって。コズエンに入ることができたのも自信になりました。自分にワクワクするというか、可能性を感じることができたんです」
「今はまっすぐ闘いたいです」
プロレス界に入って発見したのは「自分は目標に向かって頑張れる人間なんだ」ということ。楽しいことばかりではないが、だからこそ面白いと思っている。
「辛い時とか“わー!”ってなる時もあるんですけど。でも何もない平坦な人生よりはいいなって。これからもいろんなことが起きてほしいです」
そんな性格もあり、またプロレスを知ってからの期間が極端に短いこともあってか、今の玖麗は乾いたスポンジのように“プロレス”のさまざまな要素を吸収している。フューチャー王座挑戦前後のコメントの違いも興味深かった。