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藤井聡太の八冠達成に「嬉しくなかった」と語る“破格の新人棋士”…強豪をなぎ倒す藤本渚(18歳)とは何者か?「豊島先生に勝てたことは…」 

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大川慎太郎

大川慎太郎Shintaro Okawa

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photograph byAsahi Shimbun

posted2024/04/29 06:02

藤井聡太の八冠達成に「嬉しくなかった」と語る“破格の新人棋士”…強豪をなぎ倒す藤本渚(18歳)とは何者か?「豊島先生に勝てたことは…」<Number Web> photograph by Asahi Shimbun

2023年度に驚異的な成績を残し、注目を集める18歳の新人棋士・藤本渚

藤井聡太の八冠達成に「嬉しくなかった」理由

 藤本は今年2月に高校を卒業したばかり。大学には進学せずに将棋に専念する。

「自由な時間が増えるので、遅寝遅起きが習慣になりそうで怖い」と冗談交じりに語っていたが、卒業から1カ月が経って「将棋の勉強時間は取れています」と語る。対局日は8時少し前に起床するが、そうでない日は8時半に起きているという。それなら大丈夫だろう。

「将棋中心の生活は変わりません。変わっちゃいけないと思う」とキッパリした口調で語っていた。

 現役最年少の藤本は、昨年10月に藤井竜王・名人が八冠全制覇を達成してから、「ポスト藤井」の筆頭としてメディアでよく名前が挙がるようになった。無敵の勝ちっぷりを見せる21歳の最強棋士に対抗できるのは藤井よりも年齢が若い棋士と見るのは自然だが、藤本はその予想に違わない活躍を見せている。

 藤井が八冠を達成した日、藤本はABEMAで中継を見ていた。

「(八冠達成は)嬉しくなかったです。だから(対戦相手の)永瀬先生(拓矢九段)を応援していました。もちろん藤井先生を嫌いなわけではないですし、すごく尊敬しています。ただその対局は本当に永瀬先生を応援していたので。それこそ永瀬先生が最終盤で間違えたことに気づいて苦しんでいる姿を見て泣きそうになりました」

 ミスターチルドレンやスピッツを好む藤本は文化系男子のような繊細な佇まいだ。少し照れたような話しぶりが特徴だが、言動は率直である。

 藤井とは非公式戦のABEMAトーナメントで一局だけ指している。「負けたんですけど、やっぱり実力の差が歴然とあります。自分は本当にまだまだです」と語る。まずは眼前の対局で、王位リーグや王座戦の挑戦者決定トーナメントを一つずつ勝ち上がることで藤井の姿が鮮明になってくる。「王座戦は一局は勝ちたい」と謙虚だが、期待は大きい。

 少しでも将棋に興味がある読者は、海の日に生まれたから「渚」という美しい名前を持つ超有望株をぜひ記憶してほしい。絶対に損はない。

藤本渚Nagisa Fujimoto

2005年7月18日生、香川県出身。井上慶太九段門下。'22年に現役最年少棋士として四段昇段。'23年に加古川青流戦で優勝を果たし、'24年五段、C級1組に。5月より王座戦挑戦者決定Tを戦う。

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